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第二十六話

 アルマと携帯のやりとりがあって、その公園に車でやってくるのに、そんなに時間が掛からなかった。


 『すこし時間が掛かった』が、感覚的には『今から行く』というのには間に合っているだろう。


 『緊急出動中』というプラカードを車内でミラーに掛けて、車を降りると辺りを見回す。


 もう深夜が近いためか、ほぼ人通りが無い事に自然と緊張をするが公園に入るとアルマの姿が見えなかった。


 仕方ないので要所に点々と伸びている灯りをしばらく歩くと、やはりといえば良いだろうか気配がした。


 それを拍子に自分が注意深くなったせいか、自分の周りを数名の気配が取り囲んだので、彼女ではないというのは容易にわかった。


 「ふう」


 ため息を一つして手袋を握りなおし、自分の東方術でサーベルを作り出す。


 その時、ようやく声がした。


 「随分と物騒な人だね。まあ、別に構わないけど」


 「ふっ、それで何の用だ。


 私をここまで来させたのは、ワケがあるのだろう?」


 そう言うが尚も、アルマは笑っては言った。


 しかし、ゆっくりとカタールを両手に構えたので聞いてみた。


 「どういうつもりだ?」


 「色々と話したい事があるけど、キミの腕前を見せてもらうおうかと思ってね?」


 どうやら『別に構わない』と言ったのにはこういう意図があったらしい。


 ゆっくりと身構えると、アルマもそれに続いて構える。


 その姿を見ると緊張した。


 『多分、私より強い』


 そんな直感がしたからだ。


 アルマは笑いながら『歩き』で距離を縮めるが、その動作は『身構えて距離を詰める』といっていいだろう。


 打ち込んでも受け止められるのが目に見えていた。


 「さすが、そこら辺の人とは違う。経験、鍛錬、技能どれも噂に違わず。ホンモノだ」


 そう言いながら、アルマはカタールを振り下ろす。


 「はあっ!!」


 それを切り払い、反撃するがカタールで軽々と受け止められ、更に数回の剣撃の火花を散らす。


 ほんの数回、しかしそれがアルマがどれほどの腕前なのかが理解できた。


 「ふっ、どうやら、貴様はどこぞかの金持ちとは違うようだ」


 平然としたアルマと視線が交差する。


 「お褒めに預かり光栄だよ。


 だけど腕前を見ているんだ。そろそろ本気を出さないと失礼だと思わない?」


 「ふっ」


 髪をかき上げ、大きく深呼吸をして答える。


 「では、いくぞ…?」


 大きく振り抜き、その顔にアルマはカタールを振ろうとするが…途中で止めた。


 「中々、鋭いな」


 いち早く私の付加能力である『残像(ミラー)』だと気付いたアルマは、その残像から突き破った切り払いを仰け反って避けた。


 そのまま左手でアルマのサマーソルトを受け流して、今度は身を屈めた姿勢のアルマの距離を縮める。


 体勢を崩したアルマの付加能力の警戒はあった。


 しかし…。


 「ボクの負けだよ」


 「どういうつもりだ?」


 喉元にサーベルを突きつけられ、降伏の代わりなのかカタールを消しながら言った。


 「言っただろう、腕前を見せてもらうとね。


 しかし、有名になれば、その能力を研究されるというのに、まったく対応が出来なかったよ。


 ホント、大したモノだね」


 「ふっ、お褒めに預かり光栄だ」


 「ふふふ」


 アルマが笑い出し、つられて笑うと外部にあった『気配』が一斉に立ち上がる。


 「ここまでだ!!」


 大口径のライトに照らされて、少し目が眩んだが、声からしてオズワルドだろう。


 「カリフの首領、アルマ。今度は我が婚約者を狙うとは卑怯すぎるのにも程があるぞ。


 抵抗しようなどと考えない事だ。お前は我ら警備員に囲まれている」


 自信満々に言ったオズワルドを尻目にアルマは聞いてきた。 


 「隠れておいて、それはどうかと思うのは私だけかな?」


 「ふっ、どう捉われようと仕方が無いな」


 そう聞こえる範囲でアルマに聞いた。


 「どうやら、治安部の人間もいるようで、人が多そうだが…」


 ここからが、アルマとの作戦だった。


 「『出来る』か?」


 「こういう場合、人質をとったもの勝ちだよ」


 手を上げて、もう一度、カタールを作り、周囲を警戒させているとアルマはライトに向けてカタールを投げた。


 『ボンッ』


 暗くなったのが合図だとわかった。


 「ぐわっ!?」


 数名があっという間に、アルマの部下に取り押さえられる。


 オズワルドも例外ではなく、取り押さえられるのを見て、アルマはにこやかに少しワザとらしく言った。


 「これで形勢逆転。どうする?


 抵抗するなら、わかるよね?」

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