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第二十一話

 「やあ、始めましてレフィーユ…」


 自分の携帯から、逆探知し難い通信機器に切り替わり、目の前にいるアルマは彼女にそんな挨拶をしたが。


 「……」


 「切り替えに応じてくれて感謝するよ」


 「……」


 「あれ、どうしたのかな?」


 「いや、それは学園の生徒を守るためにやったのだが、すまん、そんな声で『始めまして』と言われてもな」


 「ああ、ごめん…、あの魔法使いはこんな声だったね。


 でも、それでも私が話してるとわかる?」


 「いや、構わん、アイツの本当の声を昔、聞いたことがある」


 「そういえば、昔の『魔法使い』はあんなマスクをつけてなかったね」


 アルマは手錠を掛けた自分に目をやるとボイスチェンジャーを外して改めて挨拶をした。


 レフィーユのいる場所が息を呑むような反応をする、それについ笑いながら『変わるかい?』と言うと『頼む』という声が聞こえたので、アルマはにこやかにマイクを近づけてくれた。


 「…どうも、レフィーユさん」


 「ふっ、元気そうじゃないか、さすがに三日間も捕まる気で同じ場所を徘徊しただけの事はあったな?」


 「おかげで、これで『カリフ』の存在が浮き上がりましたよ」


 ワザとらしく、アルマは言う。


 「キミはそれが目的だったのか、どおりであんな安いラーメンを食べ続けてるなと思ったよ。


 見事にワナに掛かってしまったようだ」


 「ほう、ラーメン?」


 「一杯、200円のラーメンでね、あれで元値が取り返せてるのか疑問に思うくらいおいしかったよ。連れて行ってもらった事ないのかい?」


 「なるほど今度連れて行ってもらおう。


 それでアラバ、様子はどうだ?」


 すると突然、男の声が入ってきた。


 「聞こえるか、アラバ君、オズワルドだ。きっと助けに行くから冷静に状況を伝えるんだ」


 ため息を付いたのはレフィーユだけではない。アルマが代わりに答えた。


 「何度、言わせればわかる。キミに興味はない。レフィーユを出したまま、キミはしゃべるな」


 「さっきは人質がいるから、貴様の要求を飲まざるおえなかったんだ。


 覚悟しろ、墓荒らしども…」


 「おや、テレビに出ていたキミを見る限り、信じてないように見えたけど?」


 「ぐっ!?」


 「代われ、キミの相手をすると話が拗れる」


 そう言うと、しぶしぶ代わっているのか時間が掛かっていた。


 「ええと、話を戻しますね。まあ、こうやって捕まったワケですが、人質としては高待遇な対応でしょうね」


 「高待遇?」


 「目隠しもされてませんし、何しろ手錠が前に回されてますからね」


 「おや、アラバ君、それはどういう事かな?」


 「人質に手錠をかけるというのは、普通、逃げにくいように手を後ろに回して掛けるものだからですよ。


 それに目隠しもされてませんし、その事から、すぐに帰らせてくれると言ったのは信用してもいいでしょう。


 ちなみに、残念ながら外の景色は見えませんがね」


 「…やるようだね?」


 「ふっ、なかなか賢い男でな。


 人質になった際も、近くにいた子供に危害を加える可能性があったと報告を聞いている」


 「なるほどキミが彼を特別視するのは、『いろいろ』とあるようだね?」


 「お前とて、この男だけを狙ったのは『いろいろ』と理由があるのだろう?」


 すると二人はどちらともなく『ふっ、ふっ、ふっ』と笑い出したので、誘拐された身である自分は身震いしていた。


 「じゃあ、とりあえず今はドライブを楽しませてもらうよ。


 彼はちゃんと無傷で返すから安心してね」


 『ばいばい』と気軽に、見えるはずもないレフィーユに手を振りそうな態度で通信を切ると、車も止まった。


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