第十三話
「オズワルド、親同士が決めた婚約を何を勘違いしている?」
「はは、何を言うか事実じゃないか、こういうのは大々的に公表してもいいだろう?」
あっという間に周囲がマスコミの光に取り囲まれあっという間に、その二人を取り囲んだので、円の外側から眺めていると、マスコミが調子に乗って事実の確認をしようとして、レフィーユの怒涛の言い返しの餌食となっていた。
だが、ここでわかった事があるので、セルフィに耳打ちをした。
「あれが貴女の言っていた。『気をつけて』という意味ですか、それでいまいち状況が掴みきれていないのですが、オズワルドって?」
「あの人はトラン・オズワルド、アルマフィ家と並ぶ良家の人間、そして、御曹司ってところね」
「婚約したと聞きましたが?」
「あら、やっぱりアンタもそこが気になるの?
まあ、姉さんの知らないところで親同士が勝手に決めた事よ」
「怒らなかったのですか?」
「あれを見ればわかるでしょう?
でも嫌なもので、婚約を断りきれない家柄の理由ってのがあって『名義だけでも』って、うやむやにされたのよ」
マスコミを論破するレフィーユを見るが、さらにオズワルドは黒い布のようなモノを出した。
「これを見るがいい」
『おおっ』とマスコミは驚き、シャッターのフラッシュがオズワルドに集中する。
「ふん、出たわね、ああ、これだからお金持ちは嫌いなのよ…」
「良家のお嬢様が何を言ってるのですかって、黒い布、スカーフ…。
もしかして、あれは七色の?」
「そうよ、七色同盟の一人だから断れないのよ」
「それだけではない!!」
あの人ごみの中、この会話を聞いていたのだろうかもう聞きなれたオズワルドの声が響いた。
「明日、ここで私が、その廃戦記念日の演説をするのには、皆様にもう一つ発覚した事実を公表したいから。
いや…」
オズワルドはゆっくりとこっちにやってきて聞いた。
「君は、七色同盟の事に関してどこまで存知かな?」
「それは…まあ明日の記念日の発端となった。七人の事ですが?」
「その七人、中心人物が誰だがわかるかな?」
「いえ、その…」
自分が黙り込んだように、周囲は静かになるのは誰も知らない事だからだろう。
「いや、すまない、悪い質問をしたね。
確かに、これには『リーダーを作ればその家系の子孫が可哀想』などと言った。
保護説が有効な説だとされていたのだが…これを見てほしい」
「この写真ですか、これは随分と古い金庫のようですね…?」
「その通りだ!!」
至近距離でお叫びになるので、のけ反りながらも答えた。
「『日記帳』でも入っているのですか?」
「おおお、その通りだ、よく言ってくれた!!」
そして、今度はマスコミが一斉にカメラのフラッシュを焚くので、さすがにうっとおしくなりそうだったので、半ば叫びながら。
「そ、それで、その日記帳に書かれていたのですか、リーダーの名前が!?」
「いや、今回運び出す際にわかった事なのだが、この金庫の底を拡大した写真なのだ、これが何だかわかるかね?」
「『黒が我らの思いと共にあった事を忘れてはならない』そう彫られてますね?」
「その通りだ。底に刻まれていたから、今までわからなかったが、これが指し示す事はこういう事だ。
黒、すなわちこの黒いスカーフを持った、オズワルド家が七色同盟の中心人物であるという一点の事実だ」
歓声と共によほど、重大なニュースだったのだろう。
「もしもし、本部ですか、大ニュースです…」
今から、緊急特番を組むような勢いで騒がしくなったので、写真を眺めているとレフィーユが聞いてきた。
「だが、そう早合点してはならないだろう。その刻まれた文字をちゃんと鑑定したのか?」
「何をいうのかと思えば、この切り口には2000年前の埃が検出されたのだ。
これが刻まれたのは2000年前、すなわち七色同盟の誰かがオズワルド家がリーダーであると示したかった証拠だ。
どうだ、レフィーユ、これで結婚するのを阻む理由はないだろう?」
「随分と一方的なプロポーズじゃないか、だが、一つだけ気がかりな事がある。
アラバ、どうして金庫を見たとたんに『日記帳』というキーワードが出てきた?」
『アラバ』という名前にマスコミの数名には聞き覚えがあるのだろうか思い出すように歓声を上げた。
「アラバ…、そうか君があのシュウジ・アラバか…」
そんな中で、今まで温厚な態度だったオズワルドの視線が急に味わった事のある感覚に陥った。
その感覚の名前を人は、敵意という…。