第十二話
「敵だ、みんな敵だ…」
「アンタに一つだけ言っておくわ、友達を選ぶという人の付き合い方くらい覚えておきなさい」
ごもっともな意見に言い返す事も出来ずにいるのをみて、レフィーユは言う。
「まさか自爆するとは思わなかったが、お前にとっては『怪我』がなくてよかったじゃないか」
一見、気遣いのように聞こえるだろう。
実際、怪我がなかったのは闇で作られた法衣のおかげなのだ、これは皮肉なのだ。
「そうね、あの規模の爆発で怪我がなかったのは、運がよかったわよ。
姉さんだって、あの後、後始末として、あの五人には、窓ガラスの処理やらさせてたけど、貴方はイワトの部屋を掃除するだけですんだのだから、感謝しなさい」
何も知らないセルフィ様は、そんな事を言って、湯船から身を乗り出し窓を眺めていた。
「まあ、あんな目にあったとしても、アンタもさすがに今回の事には興味があるのかしら?」
セルフィの視線の先は、このホテルより、離れたところ、おそらく海岸線に横付けされた空母という名前のタンカーだろう。
「あんな旧世代の兵器なんか持ち出して、何をしようってのは大体想像付くけど、あからさまにやってくれるのは勘弁願いたいわね」
「そうですね…」
ちなみに自分の視線の先は、セルフィの身を乗り出した際に強調した。姉より大きい胸であったのだが…。
「あいたっ!!」
隣で座っていたレフィーユが自分の腿をつねりながら答えた。
「何だって『七色同盟』が、今回『この日』をわざわざ選び、大事な発表をするそうだぞ?」
「廃核記念日ですか…。
『全人類が魔法という武器を手にする事が出来た、今現在で、核兵器、核燃料を守り切れる保証などない』
2000年くらい前、そう訴えた七人の活躍によって、世界各国が全ての核燃料、核兵器の放棄を決めた日でしたね。
その後、大規模なエネルギー問題が騒がれもしましたが、この訴えは大きな効果を生み出しましたね。
治安が低くなり続けていた性でしょうか、核弾頭だけではなく、全武装兵器の排除も決定したので。こうも言われてますね。
戦争の無くなった日…。『廃戦記念日』と。
そして、その七人の事を、トレードマークにしていた各々のスカーフから『七色同盟』と…どうしました、二人とも?」
「姉さん、この人、ホントに何も企んでないわよね?」
「そうだな、多分、何にも企んではないと思いたいが…、アラバ、大丈夫か?」
「失礼ですね。興味のある事くらい、調べても構わないじゃないでしょう?」
何かおかしな事を言ったのであろうか、ますます、警戒しだしたので少し不機嫌だった。
「ふん、まあいいわ、どうせ私達も現場警戒に出るから、変な事をしようとしたら、ヒオトさん辺りなら事故に見せかけられるから、気をつけなさい」
何をどう事故に見せかけられるのかわかりたくはなかったが、この施設から出て、服を着替えて合流を果たした時、セルフィは珍しく姉にも注意を促した。
「まあ、今回は姉さんも気をつけてね」
「ふっ、言われるまでも無い」
「何かあるのですか?」
「お前には関係がないと言いたいが、まあ、その同盟とやらに関わりがある事さ。
詳しくは調べているのなら、その記念日が決められた背景くらい調べているのだろう?」
「確か、その訴えを起した数ヵ月後くらいに、核ミサイルが本当に核爆発を起こしたという事ですか?」
「そうだ…、そしてその後、その国フォルグナート公国は『ワールドゼロ』と通称名でも呼ばれるようになるが、後でわかった事だが、その核兵器が配備されていたミサイル施設に、視察のための七人がいた」
「…いやな話ですが、魔法を有したテロで軍事設備を乗っ取られるという事を、そして、核弾頭が奪われる可能性も、尊い犠牲で立証されたのでしょうね」
「犠牲ではないっ!!」
その時大きな声が響き渡ったので、その音源らしい人物を見た。
「確かにキミの言うとおり尊い。しかし、彼らの心は私の中で生きているっ!!!」
まるで演説をするような大声だったので、少しうっとおしくなりそうだったが、この人物が誰かとレフィーユに耳打ちをしようとした。
だが、するまでもなかった。
「私は『トラン・オズワルド』その七人の中の子孫であり、そして、我が妻、レフィーユ・アルマフィを迎えに来た者である」
「つ、妻ぁ!?」