第十一話
「どうやら、ゲンゾウも捕まったそうだぞ?」
レオナは寮を見上げながら、そんな事を言うとシリウが、知らなかったのか驚いたように。
「えっ、どこで?」
「隣町だそうだ、そこであの人の妹さんに捕まったらしい」
「と、隣町、そこまでやるアラバもすごいけど、それを迎え撃てるあの人もさすがやな。
それで残りはそのアラバやけど、今、どこよ?」
「もう見つかりましたわよ」
すると、会話を遮るようにゆかりが高笑いをしながら答えた。
「今、お姉さま自らが追いかけているから、捕まるのも時間の問題ですわ」
「追っかけている?
見つかったのは、何となくわかるが、どうしてお前達は付いていかなかったんだ?」
「そこが貴方達とお姉さまの違いですわ。
きっとあの方自身で決着をつけたい事もあるのよ…」
「ユカリ、うっとりしている最中悪いが。じゃあ、今、二人はどこにいる?」
「そ、それはわかりません、ですけど貴方達が知ってるのでは?」
「だから、連れてきたというワケか、となるとゲンゾウもこっちにやって来るな。
だが悪いが、俺たちがそんな事を知ってると思うか?」
すると寮の四階のブラインドが少し開き、一瞬、当の本人達が見えたのだが。
「もう、だったら、どこに行ったのかわからないじゃない!?」
それはユカリの憤慨に遮られ、4人も抵抗はしないとはいえ、警戒の為に周囲を治安部に囲まれていた。
そんな中で、キリウが四人に聞こえるトーンで話した。
「ところでサイト、そういえば気になったんだけどさ。
みんなで回覧板を入れる袋とか用意してた時にさ、アラバのだけあの小箱が用意されてたけどなんだったの?」
するとサイトの代わりにレオナが答えた。
「ああ、あれかあれには少しばかり細工がしてあってな」
「細工?」
「簡単な発火装置でな。もしも、レフィーユさんが看破した時に、その細工をだな…」
「すんまへんな、アラバはん…」
『パチッ』とスイッチを押すので、さらに疑問に思って聞いてきた。
「なんだよ、そのスイッチ?」
「簡単な発火装置だ、一分後にあの箱が燃え上がる」
「燃えるって、アラバはその事を知ってるの?」
「当然知らない」
「だったら、どうして!?」
「仕方ないだろう、あの人に追っかけられて逃げ切れると思うか?」
普段の彼を知らないだろう、今、四階にて学園内で一番強いとされるレフィーユ・アルマフィと互角に渡り合える事すらも…。
「だからって、このままでは口座番号も…」
「大丈夫だ」
「このままでは新しく作らなければ、男子生徒の風紀も…」
「大丈夫だ」
「何故?」
「口座番号は覚えてる」
普段、男とはこういう時に凄い記憶力を発揮するのである。
そして…。
「だったら仕方ないね」
納得する人間がここにも四人。
「もう、俺たちに出来る事は、怪我をしない事を祈るだけだ」
「校歌斉唱」
東に見ゆる~♪
未来のために、学ぶは絆~♪
励みいれよ、この学園♪
ああ、我らの~♪
白ほ~う学園♪
いきなり、校歌を歌いだす四人はあからさまに気味の悪いので、ユカリが何なのか聞こうとした。
その時、二人も背中を向けていた。
まるで決着の付いた二人のように…。
独特の緊迫…。
そんな中で彼は物の見事に…。
『爆発』した…。
四階が爆破され、後からやって来た事情を知らないイワトではあったが、叫んだ。
「アラバー!!」