第一話
『ターゲット、ただいま三名の護衛をつけて市内を散策中』
『散策、何の目的もないのか?』
『はい、すぐ後ろに尾けさせている。
他の構成員が彼、漆黒の魔道士本人の口からはっきりと聞いたそうなので、間違いないと思われます』
『ふむ…』
尾けられている…。
おそらく学園寮から出た時から尾行を始めているのだろう、という事は白鳳学園以外の部外者に尾けられたのだと勘が冴えた。
『ですが、よく飽きませんね』
『どういう事かな?』
『ほぼこの前と同じルートを通って、またラーメンとライスですよ?』
『最初、尾行をした時あれには私も驚いたよ、200円だからね』
『……』
『すまない、でも気をつけてね…』
『どうしましたアルマ様?』
『どうやら、彼にも考えがあるらしい。そのまま尾行し続けてやろうじゃないか』
目が合った…。
これも勘というのだろうか、おそらく今、目が合ったこの人がそうなのだろう。
構わず精算して食後独特の深呼吸して、市内を散策を再開していると、ようやく二人で尾行をしているのだなと理解した。
そして、自分の周りには、いろんな意味を込めて合計五人…。
しかし、組織は違う。
「おい、靴紐がほどけているぞ?」
ある場所へ辿りついたので、ワザと自分の能力で靴紐を解いたのを指摘されたので、言われたとおり身を屈め、その拍子に置き手紙をする。
今、ここで組織の名前を挙げるなら、過去を振り返らないといけない。
今回ばかりは、それを何回も繰り返す事になるだろう。
では、事の発端を振り返ろう…。
……。
「ふう」
水面から地上へ、泳ぐという行為を終えたレフィーユは水着から晒された白い素肌としなやかな肢体で周囲を釘付けているとユカリがジュースを差し出してきた。
「お姉さま、お疲れ様です」
お姉さまと言われた同世代の女性のレフィーユは、髪をかき上げてそれを受け取り。
「お姉さま、次は…」
「すまないが、少し休ませてくれ」
と言って、ほぼ独占していたユカリの誘いを終わらせて、ジュース片手にある人物を探す。
その人物、シュウジ・アラバは…。
「うへええ…」
海パン一丁、ジャグジーにて、だらしない声を上げてくつろいでいた。
一通り、泡のマッサージを受けたら、裏返り、また違う角度からの刺激を受けているとやっぱりやってきた。
「せっかく、こういうトコロにやって来たのにもう少し別の楽しみ方をしてみたらどうだ?」
そういいながら、隣に座り『ふう』とため息をつくと聞いてきた。
「しかし、珍しくお前がこういうトコロにやってきたな?」
彼女の『こういうトコロ』と言うようにここは『プール』ではない。
ここは自分達の市内に少し離れたトコロにある、浴に言う『高級ホテル』である。
自分はこの気持ちよさそうに湯船に浸かっている彼女の誘いでやってきたワケだが、少し特別なワケもある。
「ふん、アンタが珍しく姉さんの誘いでやってくるなんて、このイベントに何か悪いことの起こる前触れかしら?」
重要な催し物の際に護衛を承る、白薔薇学園の治安部、そして彼女の妹であるセルフィの水着姿を見ながら、背伸びをしながら間違いなく『ここにあるのだな』と思った…。
「『漆黒の魔道士』がやってくるのかもな?」
「げっふん、げふん!!」
「き、汚いわね、でも、冗談抜きでよく来たわね。あんな事があったのに?」
セルフィの言う『あんな事』とは、遡る事、数日前になる…。