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第十四話 矮小な

 旅は順調だった。途中雨に降られることもなく、俺たちは予定通り三日でキパラ大森林の監視を目的とするヒュブル村に到着。翌朝は一度第一拠点の屋敷に瞬間移動で戻ってコレッタに弁当を作ってもらった。


 支度を終えたらいよいよ大森林に向けて出発だ。どうでもいいが、さすがにこの三日間で後からついてくる者が誰なのかは気づいていた。


 Aランク冒険者パーティー『ドラゴンスレイヤー』の面々である。彼らは乗り合い馬車など足下にも及ばない豪華な装いの馬車に乗っていた。おそらくあれは借り物とかそういうのではなく、自分たちの持ち物なのだろう。御者も専属を雇っているようだ。


 ヒュブル村からキパラ大森林までは乗り合い馬車は出ていない。つまり普通は徒歩で向かうのだが、自前の馬車を持っているならそれで行けばいい。なのになんでアイツら徒歩でついてきてるんだ?


「やあやあ、奇遇だね君たち」


 コレッタとルラたち三人は声をかけてきたバティルに一瞥をくれると、そのまま無視して歩き続けた。やれやれ、相手をするのは俺か。


「奇遇? 俺たちの後をつけてきたとしか思えないんだが?」

「言いがかりだよ。ボクたちもラウドスネークの討伐を請け負ったのさ」


 言われてみればあの依頼は一組だけに向けた内容ではなかった。つまり依頼はキパラ大森林に行く基準さえ満たしていれば、誰でも何人でも受注可能だったというわけだ。


「そうか。ならせいぜいがんばってくれ」


「釣れないことを言わないでおくれよ。せっかく同じ依頼を受けているのだから協力し合おうじゃないか」

「アンタらAランクパーティーなんだから協力なんか必要ないだろ」


「いやいや、奴隷の彼女たちが低ランク、失礼、Fランクのご主人様にこき使われるんじゃないかと心配しているんだよ。例えば囮にされたりとかね」

「ご親切にどうも。だがそんな心配は……」


「お館様! ラウドスネークです!」


 突然ルラが声を上げた。そこはまだキパラ大森林に入ってもいない、位置的にはヒュブル村との中間点くらいのところだ。なのに彼女の言った通りヘビの魔物が三匹、こちらに向かってきていた。


「妙だな」


 バティルにしては珍しく神妙だ。


「なにがだ?」

「ラウドスネークは基本的に単独行動なんだ。親子でも一緒に行動したりはしないはずなんだよ」


「たまたまだろ。コレッタは俺の後に! ルラたち三人で()れるか!?」

「もちろんです、お館様! ルリ、ルル、お館様のご命令です。一匹ずつ仕留めますよ!」

「「了解!」」


 ルラとルリの武器はロングソード、ルルは短剣だが二刀使いである。ルルの構えた姿が忍者というかくノ一っぽくてカッコいい。そしてカッコだけではなく、三人とも間違いなく強かった。


 ロングソードの二人は下段からの振り上げ一閃でラウドスネークの首を落とし、高く飛び上がったルルはヘビの頭に短剣を突き立てて息の根を止めていた。なんか俺、すごい子たちを手に入れたらしい。


 魔物の死体は以前ヒュブル村で手に入れた魔法のバッグに収納する。もちろんこのバッグは『ドラゴンスレイヤー』に対するカムフラージュで、本当の収納先は俺のアイテムボックスにしてあった。


「お館様ぁ」


 ルラたちが魔物の返り血を浴びてしまい可哀想なことになっている。次からは対策を考える必要があるかも知れない。


「よしよし彼女たち、ボクがクリーンの魔法で……」


 お節介バティルが頼みもしないのに魔法を使おうとしたので、俺が先に浄化してやった。浄化はクリーンの上位魔法である。こんなヤツに魔法をかけられたら返って穢れそうだったからだ。バティルが呆けた顔をしているが全員で無視を決め込む。


「お館様、ありがとうございます!」

「「ありがとうございます!」」


 それから森に向かって進んでいくと、ところどころでラウドスネークと出くわした。かれこれ二十匹は倒しただろうか。


 ところが森に入って間もなく、ヘビの魔物が次から次へと現れたのである。ルラたちも倒すのは苦ではなさそうだが、返り血を浄化するヒマがない。もうコイツらの素材とかいらないから何とかしてほしいよ。そんな時だ。


「おかしいな」


 またもやバティルが呟いた。さすがに状況が状況なので『ドラゴンスレイヤー』もラウドスネークの討伐に参加している。ルラたち三人に加えてAランク冒険者五人がいるので討伐自体はスムーズだが、とにかく数がハンパない。


「もしかして魔物の(スタ)(ンピ)(ード)とかいうやつか?」

「いや、そこまでではないと思う。ラウドスネークばかりだし多いと言ってもスタンピードは規模がちがうからね」


 よかったと思ったがスタンピードはあるのか。俺、あれ嫌いなんだよ。異世界転生モノのラノベとかでやたらめったら取り上げられてたからな。


 色んな理由とか事情とか切り抜け方法とかでオリジナリティを出そうとしてたみたいだけど、そんなの全部スタンピードなんだよ。端から見ればどれも一緒。


 (やま)(んば)メイクして個性だーとか言ってた昔の女子○生と同じだっての。だから好きな作品でもスタンピードが出てきたら読むのをやめてた。異世界転生も一緒じゃないかって? 知るか。あくまで個人的な意見だ。


 でも状況としては似たようなものなのか。とにかく倒したラウドスネークは二百や三百どころではない。積み上がった死体も大きな山になっていた。


 それからどれくらい経っただろうか。ようやく魔物の数が減ってきたと思ったら、何やら地響きのような音が聞こえてきた。地面も揺れている。


「まさか!?」


 見るとバティルたち『ドラゴンスレイヤー』の面々が真っ青になっていた。ありゃ、これはもしかしなくても俺が嫌いな展開なんじゃないか?


 音のする方を注視していると、思った通りドラゴンの頭が見えたのである。体高は十メートル以上はあるだろうか。鱗はエメラルドのように美しく輝いているが、牙がむき出しで鼻息が荒い。ひとまずルラたちには俺の後に来るように命じた。


「矮小な人間よ」


 ほらね、キタキタ。人語を解するってヤツだ。しかもこの世界の生物の頂点にあるという自信からか、めちゃくちゃ偉そうである。全くよくある話で飽き飽きするよ。


——あとがき——

明日より更新を午前7時台から9時台までの間に変更させて頂きます。

なるべく7時台に更新しますが、間に合わない可能性もあるため広めのレンジにさせてさせて下さい。

また毎週土曜日は19時台にも1話更新する予定です。

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