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鉄怪獣(てつかいじゅう)と遊んだ日

作者: 藤乃花

私、藤乃は小さい頃ショベルカーの正式名称を知らず「ツント怪獣」と呼んでいました。「怪獣」は分かりますが、何故「ツント」なのかは今となっては不明でして、あの頃の私に聞きたいと思うこのごろです。ショベルカーを「怪獣」と呼ぶ物語をいつか書こうと思い、ついに今日書いたというわけです。稚拙な内容ですが、どうか読んで頂ければさいわいです。




  

更地になった場所に、置かれたままにされてあるショベルカーが一頭いました。ショベルカーは長い首を地面に付けたまま泥だらけで眠りについています。近くの歩道を通るとき、カイトくんはいつもこのショベルカーを眺めます。(鉄怪獣てつかいじゅう、いつ起きるんだろ)鉄怪獣てつかいじゅうというのは、カイトくんが付けたショベルカーの名前です。見た感じが鉄で、形が怪獣みたいだからです。鉄怪獣てつかいじゅうと遊んでみたい……いつしかカイトくんに、そんな考えが生まれていました。そんなある日、いつも遊んでいるチカオくんが家族とお出掛けしたので、カイトくんは鉄怪獣てつかいじゅうがいる更地に行ってみました。「いた……!」鉄怪獣てつかいじゅうに近付いたカイトくんは、小声で起こしてみました。「鉄怪獣てつかいじゅう遊ぼうよ」小声だからか、鉄怪獣てつかいじゅうは起きません。どうしても遊びたいカイトくんが次にとった行動。それは鉄怪獣てつかいじゅうの体に乗ることでした。「遊ぼう、起きて」カイトくんの手が鉄怪獣てつかいじゅうの体に付いてある間接部分などを、痛くないように動かしました。<グッ……>動かした瞬間、鉄怪獣てつかいじゅうは首を起こし、泥から顔を上げました。「起きた!遊ぼう!」カイトくんが楽しそうに呼びかけると、鉄怪獣てつかいじゅうは大きな体を揺らし、ゆっくり歩きだしました。カイトくんを乗せて、更地じゅうを歩く鉄怪獣てつかいじゅうのおたけびが空に響きます。<ガアアアア……ッ!>おたけびはそれは楽しそうでカイトくんまで叫びだしたくなり、鉄怪獣てつかいじゅうと同じようにおたけびをあげたのです。空いっぱいに響いたおたけびを聞いて、鳥たちが集まります。鉄怪獣てつかいじゅうとカイトくんの周りに、鳥が沢山降りてきました。あっという間に更地は鳥の楽園になり、さえずりがあちこちから聞こえてきます。「鉄怪獣てつかいじゅう、君がこの更地を鳥の楽園にしたんだよ!」<ガアアアアアアアア!>ひときわ大きい鉄怪獣てつかいじゅうのおたけびで、カイトくんは、ますますゆかいになってきました。どれくらい経ったでしょうか。空には夕やみが迫り、鳥たちは帰っていきました。風が強くなり、カイトくんは帰る時間だと感じ始めました。「鉄怪獣てつかいじゅうもう、ボク帰るよ。また今度、遊ぼうね」カイトくんが更地を後にしたしばらくの間も、鉄怪獣てつかいじゅうの足音とおたけびは続いていました。カイトくんと次に遊ぶ日を待っていたのでしょうか、鉄怪獣てつかいじゅうの位置が数日間少しずつ変わりつつありました。鉄怪獣てつかいじゅうの事を忘れた事はありません。けれどカイトくんはチカオくんや、他の子たちと遊ぶ日が続いて、鉄怪獣てつかいじゅうが待つ更地に行く事がなくなりました。何ヵ月……いいえ、何年時が過ぎたでしょうか。カイトくんは高校生になり、ふと鉄怪獣てつかいじゅうの事が気になりました。あの歩道を通る事がなくなり、更地がどんな風になっているかを今は知りません。カイトくんの足は更地の方へ……「カイト!」「あ、リサ。部活お疲れ」「カイトも、生徒会のお仕事、お疲れーっ!」向く事はなく、同じ高校に通う女子生徒のリサのもとへ向きました。カイトくんは今、高校生活、将来の夢について等を楽しむ年齢に差し掛かっているのです。鉄怪獣てつかいじゅうと遊んだ日の記憶は薄らいでいき、それでも時おりカイトくんはあの日のおたけびを思い出す事があるのでした。

『また今度遊ぼうね!』 

 【ガアアアア……!】

 

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