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生殺ジャンクヤード  作者: 綿鎬虎具
15/17

望み


後ろから何かが迫る。

自分は何の反応も出来ず、為すすべなくやられてしまう。はずだった。

いつの間にか自分の身体にしがみついていたメメ殿が後ろの相手に飛びかかる。

「おっと…」

自分に振り下ろされそうだったシャベルを絡めとる。そのまま後ろにいた人物も捕らえようとする、が

「まだお仲間がいたんですねぇ」

立っていたのはこの村の、この華生圏の管理人ロッカだった。


「もう!丁重にもてなそうと思ったらお二人とも勝手に人の家にあがりこむんですから!アタシにも準備ってものがあるんですよ!」

プリプリ怒りながらまくしたてるロッカの目はどこか虚ろで、こっちを向いているはずなのにどこを見てるかわからない、そんな印象を抱いた。

じりじりと後ずさる。

「ここはね、悪いことしたり、言いつけを守れない子を反省させる部屋なんですよぉ」

自分の反応など関係なく喋り続ける。

「わざと痛くなるように植え付けてあげるんです。そしたら皆涙を流して反省してくれますよぉ。根が筋肉やら何やらをズタズタにしながらもちゃーんと生かしてくれるんです」

「それは…酷いですな。この村に住んでいる者は皆そうなるんですかな」

「?いえいえ、ちゃんと言うことを聞いてくれる子達を無闇に痛めつける趣味はありませんよ。眠るように安らかに花になれるのが華生圏のウリですから」

「それは、よかった」

「もしかして誰かの発芽に立ち会いました?」

「若葉殿です。自分が最期に立ち会わせてもらいました」

「きっと彼女は美しい花になったでしょう?控えめな子でしたけど優しい気遣いのできる子でしたから」

「えぇ」

「後でまた植え替えてあげなきゃ、うんと陽当たりのいい場所で気持ちよく咲けるように」

「ロッカ殿…あなたは」

「はい?」

「あなたの望みは…」

「望み?そんなの綺麗な花をお世話してあげることだけですよ」

当たり前だと言わんばかりに彼女は笑った。


「ここは孤独に死んだ人達が生まれ変わるために訪れる華生圏。仲間たちに囲まれる平穏な楽園ですから」

この人は、

本気で言っている。

誰かの願いを叶えようとする自分と同じように

花になった人達を、

自分の尺度で、自分のやり方で、

救おうとしている。

そう思えたのはきっと、

死にゆく彼女の笑顔が未だにこの目に焼きついていたから。

「自分にはこの場所を否定することは出来ませんな」

そう言うと、彼女は目を輝かせた。

「プレゼントさん!あなたもこの村の住人になりませんか!」

「自分が…」

「アタシ!ずっとお世話します!お庭で他の子達も一緒に!」

純粋な好意で自分を誘ってくれるロッカ殿に頭をさげる。

「せっかくのお誘いですが、申し訳ありません」

一転泣きそうな顔になるロッカ殿。

「ロッカ殿がこの村に住む者達のためにここに居るように、自分にもまだやることがあります」

「やること?」

「大切な人の願いを叶えるため、まだ旅をしていたいのです」

「…大切な人ですか?」

「はい、まだ見ぬ誰かが自分を待っているようなそんな漠然としたものなのですが…自分はそんな人の願いを叶えるため旅をしております」

「…」

「それは、今共に旅してるトモリ殿達だったり、この村で出会った若葉殿やロッカ殿のことでもあります」

「…」

「皆の願いを叶えた時、自分のような奴にも願いが生まれると思うのです」

それは、

自分が生前持てなかった。

最期まで生まれなかった。

たった一つの存在理由。

「だから自分はまだ旅を続けます」

ロッカ殿は穏やかな様子で

「仕方ないですね」

「ありがとうございます」

「あっでも、心変わりを待ってますからね」

そんな言葉で自分達の潜入ミッションは幕を閉じた。



「では、トモリ殿に起きてもらいますか」

「あっ…一度苗木を植え付けちゃうとそのー…」

モゴモゴ喋っているロッカ殿は構わずにメメ殿がトモリ殿の頭部に勢いよく突っ込む。同時にジュワジュワという何かが溶ける音が部屋中に響く。

うーん過激な補食シーンですな。ロッカ殿が「ヒエッ…」っとドン引きしている。あなたのやった行為も同レベルかと思いますが…。

しばらくすると、見知った姿のトモリ殿がパッと現れた。

「ええーっ!」

「トモリ殿遅くなって申し訳ないですぞ」

「いえいえ…僕が不注意だっただけですから、メメもありがとう」

メメ殿はまたトモリ殿に飛びつき、服の中に隠れてしまった。

「さっきまでの話は聞いておられましたか?」

「一応意識はあったので…ロッカさんは?」

ロッカ殿はトモリ殿の死体が入った箱をいじくり回している。

「苗木の成長も桁違い…わっもう種子が出来てる子もいる…す、すごい…」

ロッカ殿がぐるりとこちらに顔を向ける。今までで一番の目の輝きだ。

「トモリさん!うちの専属苗床になりませんか!?」

「丁重にお断りします」

「そこをなんとか!非礼も詫びますし、そちらの要求にも可能な限り応えますからぁ!」

すがりつくロッカ殿をトモリ殿は迷惑そうにつきはなす。

あ、そうだ。

「ロッカ殿実は自分お願いがあるのです」

「ふぇ?」

「若葉殿を譲っていただきたいのです」

「えぇーっ!」

「若葉殿は旅に興味を持っていたようなので、花になった彼女と色んな地を旅してあげたいのです」

「でもぉ…」

「必ず無事にここに送り届けます。トモリ殿の交渉も自分が手伝いますよ。1、2体死体を残してもらえるように頼んでみますぞ」

「…」

…ダメか?

「…5体」

そこからは自分とロッカ殿でトモリ殿の周りを土下座で囲いながら行われる奇妙な交渉の姿があった。

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