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生殺ジャンクヤード  作者: 綿鎬虎具
13/17

プレゼント


トモリ殿を見送って若葉殿の所に戻ってから数十分。

最初は自分の話を興味深く聞いていた若葉殿も疲れてしまったのか今はベッドで横になっている。

手持ちぶさたになってしまったが…女子の部屋を物色するのは気が咎めるし、大人しく若葉殿の目覚めを待つことにしよう。


若葉殿の体調は相当悪いようだ。時間が経つほど、大量に汗をかき、呼吸も荒くなっていく。

流石に黙って見ているわけにもいかない。

タオルを探して濡れタオルを作る。

とりあえず拭けるところだけ拭いてあげよう。若葉殿が起きてくれれば後は任せればいいだろう。


「失礼しますぞ若葉殿」

布団を捲ったとき違和感を覚える。

ほんのちょっとの違和感。

腹の部分が少し盛り上がっている。

女性への配慮やプライバシーなど頭によぎるが、それよりも嫌な予感が勝った。

服を捲るとその下には小さな植物の芽が生えていた。


植物は完全に身体に根を張っていた。その根が拡がっていくほど植物は育ち、若葉殿の症状は酷くなっていく。

うなされる若葉殿の身体を拭くことしか自分には出来ない。




お前に出来ることは何もない

毎日そう言われていた

目をあわせるだけで殴られた

怒りながら

泣きながら

殴られた

何をしても怒られるから

隠れていたら引きずり出されて殴られた

酷い人だったけど

自分にはその人しかいなかった

だからその人に気に入られなきゃ自分は駄目なんだと

自分はここにいていいのだと言ってほしかった

自分を求めてほしかった




「…ぁ」

声を聞いて、顔をあげる。

若葉さんが目を開けてこちらを見ている。もう、植物の根は顔にまでせまっていた。

平静を装い、

「起こしてしまいましたか」

彼女は何かをしようとしている。

「…すみ…」

発声も困難なようだ。ほとんど聞き取れないヒューヒューという意味のない音に変えられる。

「お気になさらず」

何かを言わなければと思っても二の句が続かない。

この死を前にした少女に何を言ってあげればいいのだろう

何を求めているのだろう

自分にできることを思い出す

「若葉殿、何か願い事はないですかな?」

教えてほしい

「どんな些細なことでもいいのです。あなたの望みを自分に教えてもらえないでしょうか」

彼女の目は虚ろでこちらが見えているかもわからない。

それでも聞かずにはいられなかった。

あなたを助けたい。

あなたの願いを叶えたい。

「色…………所を…旅し……です…」

「…書けますか?」

紙とペンを用意する。

「お願いです、若葉殿書いてください…」

ペンを彼女の手に持たせようと渡す。

ペンは彼女の手をスルリと滑り落ちる。

もう一度渡そうとした時に、手を握られた。

弱々しくて、離したら消えてなくなりそうだった。

優しく握りかえすと彼女は少し笑ったような気がした。

手から温もりが消えていく。

そして彼女の温もりが移るように大きな花が咲いた。

明かりに照らされる真っ白な花が、

美しい花だった。

彼女は笑っていた。

美しい顔だった。

自分は何かを与えられただろうか

彼女に何かを贈れただろうか

今はもう冷たい手を握りながら

そんなことを想った。


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