病人
覚えているのは、誰かの悲しそうな、悔しそうな色々な感情が混ざった顔。
私を心配してくれるその顔が嬉しくて、申し訳なくて、その顔を見るために生きていた。
身体を蝕まれながら、
心を削りながら、
ただ生きていた。
時間が経つにつれ、その人の表情に疲れが混ざってきた。
時間が経つにつれ、私の身体は壊れていった。
ある時、私は自分の身体がどうしようもなく壊れてしまったことにようやく気づいた。
形のあるものは壊れるってどこかの人が言ってた気がする。
だったら、はやく壊れてあげなきゃ、
あの人が疲れきってしまう前に
後戻りが出来なくなる前に
神様はその願いを叶えてくれたみたいで
その時はすぐに訪れた。
電気が消えるみたいに力が抜けていく。
怖くはなかった。
どうせこうなるって思ってたから、
ただ、
1人だけの部屋はとても広くて
とても静かで
とても寂しかった
目を開けるとプレゼントに頭を突っ込んだような人が腰かけていた。
「起こしてしまいましたか」
起き上がろうと力を入れても、身体は泥のように重たい。
「…すみません」
「お気になさらず」
沈黙がながれる、何か言いたいのだけどあまりのダルさに口も動かない。
また、私壊れたんだ。
…また?
何の話だろう、
思い出そうとすると頭がグルグルする。
沈黙に耐えきれなくなったのかプレゼントさんが私にこう問いかけた。
「若葉殿、何か願い事はないですかな?」
願い事?
「どんな些細なことでもいいのです。あなたの望みを自分に教えてもらえないでしょうか」
私
私は
もっと自由な身体で生きて
自由に美味しいものを食べて
そう…
「色んな…場所を…旅したいです…」
「…」
プレゼントさんが何かを言っている。
私の願い事聞こえたのかな。
もう口は動かない
力が抜けていく
それでも、私はありったけの力を込めて、その人の手を握った。
応えるように手を握り返してくれた手は暖かくて
私のワガママを許してくれるような優しい手だった
2回目は
寂しくなかった。




