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2、勇者大量発生の謎


「まったく、毎度毎度、このようなエセ勇者ばかり、困ったものだ。」

 背後で魔王ルシフェルの声がした。


 今しがた、再び邪悪なインクバスに変身し、残りのパーティーメンバーを葬ったばかりのミィーリィーが振り返った。

「ルシフェル様・・・」


「ご苦労だったな、ミィーリィー、流石だな。――まあ、今回も本物の勇者ではなかったという訳か・・・」

 ルシフェルが戦いの跡を眺めながら言う。


「はっ。・・・ですが、いつかそのうち真の勇者が現れるやもしれません」

「そうだな・・・。ま、例え真の勇者であってもこの俺が負けるはずはないがな」

 そう言いながら、ルシフェルが不敵に笑った。

「もちろんでございます」

 ミィーリィーも大きく裂けた口を吊り上げ、ニヤリと笑う。


「しかし、この勇者を名乗る連中の急増はどうしたことだ・・・」

「はっ、私の聞き及ぶところによりますと、こ奴らは皆、『ニーポン』とかいう異世界の国から転移・転生して来た者だとか」

「ニーポンだと?」

「はい、先に捕えたエセ勇者を尋問しましたところ、何でもその『ニーポン』とかいう国では、異世界に行くことこそ、多くの者たちの憧れるところなのだそうでございます」


「う~む、何故(なにゆえ)そのようなことに・・・」

「さあ、私にもそれ以上のことは…。そう、ここはひとつ、賢者ベルゼ様にお伺いを立てるのがよろしいかと」

「なるほど。そうだな。よし、すぐに王室に賢者を呼べ!」


 ****

 

 王宮の大広間に魔王ルシフェル以下、魔王軍の幹部たちが集まっている。各地の勇者討伐の任から戻った四天王たちもいる。


 中央に祭壇を作り、左右に灯された篝火(かがりび)の中、賢者ベルゼが何やらブツブツと念じながら一心に祈っている。

「我らが大租(たいそ)なる大悪魔サータンよ。我が願いを聞き届け給え・・・・・・」


 賢者ベルゼは目を閉じ、しばらく(こうべ)を垂れていたが、やがて・・・

 ――うえぃ!!

 という掛け声とともに目を開き、ゆっくりと一同の方を振り返って悪魔どもを睥睨(へいげい)した。


「どうだ、何かわかったか? ベルゼ」

 ルシフェルが進み出て尋ねた。

「ははっ。ルシフェル様」

「そうか、して、このところの勇者を名乗る者たちの急増の原因は如何(いか)に?」


 賢者ベルゼは一瞬目を閉じ、ふうっ、と一つ息を吐き、すぐにカッと目を見開いた。

「私が大悪魔サータンに祈りを捧げ、(えき)を立てましたところ、様々なものが見え、いろいろとわかったことがございます」

「ほお、そうか。早く申せ!」

「ははっ! 昨今の勇者たちの暗躍の元凶は、こことは別世界にある、『ニーポン』とかいう国が原因のようでございます」


「なに! 『ニーポン』とな?」

「おおっ!! やはりそうであったか・・・」

「なんと・・・。恐るべし『ニーポン』――あれだけの数の勇者を送り込んで来るとは・・・」

「早く手を打たねば!」

 集まった幹部たちが口々に騒ぎ出した。対して、魔王ルシフェルは口をへの字に結んで沈黙している。


 持っていた杖を左右に振って、悪魔どもの騒ぎを鎮めてから賢者ベルゼは続けた。

「その『ニーポン』なる国では、異世界に転移・転生し、その世界の魔王を倒したい、などという、とんでもない身の程知らずの考えの(やから)が、大量に発生しているとのこと」


「なんと!!」

「嘘だ!!」

「まさか! 信じられん…」


「いえ、皆様方、このことは天上界で死者の選択の儀を司る、女神たちの情報からも間違いはありませぬ。

なんでも、『ニーポン』国では『げえむ』、『あーにめ』、『らあいとのーぶる』なる流行(はや)り病が蔓延(はびこ)っており、かの国の若者たちを次々と(むしば)んでおるそうな。

しかして、ひとたび、その流行り病に取り込まれたならば、決して癒えることなく、物語の主人公たるべく、自らの(やかた)にひたすら籠り、その修行に邁進(まいしん)するとのこと」

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