双子令嬢ネリとウリ
まさにお城だ。
絵本で見たことがあるような、白い外壁が空高く聳え立つ立派なお城が目の前にあった。
エチノダーンが、「早く早くー!」と誰よりも早くオタマヒコの貝殻から飛び出して、体をくねらせながら手招きをしている。
白の最上部には立派な国旗のような旗があり、風ではなく水流に靡いていた。
遠くてよく見えないが、魚の紋章のようなイラストが描いてるのは分かった。
私が“トルコ風”を感じたのは、城の屋根が球体で丸みを帯でいることや、建物全体が白(光の加減で時おり青にも)に見えることからだったのだろう。
幻想的なお城は、見える角度で虹色にも見えた。
この温泉のお湯の気泡が上に向かって流れていくようすが、竜宮城の雰囲気を強めていたのだろう。
「こっちよー!」
エチノダーンがいそいそ急ぐので、私たちも足早に走った。
「謁見の間はこちらー!こっちが近道だから!
私ってば、足が短いし泳いでもそんなに早く泳げないから、近道させてもらうわねー!」
そう言って、エチノダーンは広すぎる広間の脇にある扉から入って、やや急な螺旋階段をかけあがっていった。
「クロノなら、移動魔法ですぐ行っちゃうがな」
移動が面倒くさいようで、クロノが少しふて腐れていた。
「オタマヒコで移動できただけ、大分楽だったんだ。階段くらいは、我慢しよう」
ヒルナが冷静に返した。
「クロノはお嬢様みたいだもんね。おんぶしよっか?」
クロノは小学生低学年くらいの身長だ。
おんぶしても、何とかなるだろう。
「ううん。お姉ちゃん有り難いが断っておこう。精神分離の魔法で、まだ体が本調子でないじゃろう?これぐらいなら、何てことないぞ」
「ありがとう」
クロノはたまに子供のように甘えるときがある。
いくら何百年と生きていても、心はまだきっと幼子なのだ。
時の神クロノスの隠し子で、寵愛を一心に受けていたとしても、甘えと愛情は違うのだろう。
「さぁて、着いたわよ!」
おそらく螺旋階段を三階か四階まで登ると、開けたら場所に出た。
「あ」
そこにメイド服のような衣装を着た少女が立っていた。
クロノよりも年上で、ロキよりは年下に見えるその少女はオレンジ色の後ろ髪を襟足できれいに切り揃え、すべすべの肌を大胆に出した水着のようなメイド服を着ていた。
腰回りはフリフリのフリルでスカートかズボンか分からないくらいにボリュームがあるボトムスを履いていて、上半身は胸元をチューブトップで隠したくらい控えめだ。
一番の特徴は耳だ。
魚のヒレようなものが耳の辺りについている。
「魚人族かな。エフルと同じで種族の特徴は耳にも現れる」
ヒルナが言った。
「みなさま~。遠路遥々ありがとうございます。エチノダーンがご案内するので、迷いはしないと思っていましたが、裏口から来るなんて~。
エチノダーンだめでしょう?仮にもお客さまなんですよ」
くりくりしたぱっちりお目目と視線が合って、ドキリとした。
ヒルナもクロノも美少女だが、このメイドもかなりクオリティが高い。
しかもヒルナとクロノとは違うジャンルの可愛さだ。
「だってせっかちなネリさまでしょう?予定時間よりも巻いてこないと機嫌悪いと思って、裏口使っちゃいましたー!」
「そうですね、ありがとうエチノダーン。
さぁみなさま、ネリが楽しみにしていますよ。ただ、嬉しさや気持ちを表現するのが苦手なので、気分を害されないでくださいね。天の邪鬼で不器用なだけですから」
そう言って、美少女メイドは大きな門を開けた。
広間よりも更に広くて天井が高い場所の奥に、“いかにも偉そうな”人が一人王座に腰かけていた。
「あちらに座っているのが、このズィズィミの万幸湯の第一人者であり、経営者であり、一国となった場所を統治する第2令嬢のネリです。髪は、ナヤカンリの翼と同じ金色が特徴です」
「第2令嬢ということは、第1令嬢も?」
間髪入れずにメイドに質問をしてみた。
「あー、はい、いますよ。
ちなみにボクです。ボクが一応第1令嬢のウリです。やっぱりネリと違って王族感ないですし、威厳薄いですかね?」
そう名乗ったウリの困った笑顔は、異世界至上最も胸にキュンとくるくらい衝撃的だった。
「さぁ、立ち話もなんですし。
ボクもですが、ネリもみんなと話したいって言ってましたから、行きましょう」
遠くからでもネリさまがイライラしながら待っているのが分かった(笑)
ズィズィミの万幸湯の双子令嬢の謁見が始まったー!
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