【第2章完結】惨憺の姫の笑顔、そして新たな旅へー
「…っていうことが、私の頭の中にぐわーっと入ってきたの。
そして、体にエネルギーがわぁっと沸いて、気がついたら光に包まれて、流れていた血も止まって、元気になっていたって訳」
私は目を覚ましてから、ネモフィラさまの部屋に集まったロキとヒルナとクロノにこれまでの事情とネモフィラさまの過去を伝えた。
クロノに関しては、私がネモフィラさまの部屋を訪れると聞いて、静かに着いてきたものの、屈強な結界を壊すことができずにいたらしい。
「クロノは戦闘向きじゃないからのう…力が…力さえあれば…」
鼻水や涙を流すクロノの頬に私はそっと触れた。
「ありがとう。でも、無事に帰ってこれたから、オールオッケーよ」
ロキはネモフィラさまと何かを話している。
昔話にでも花を咲かせているのだろうか。
ネモフィラさまの顔は、今まで見た中で最も穏やかで、優しかった。
「さぁ、時の神の子よ、早く姉御の体を持ってくるが良い。
エルフの娘よ。主人の次は、私もほどほどに直してくれないか。
ロキはパラが詰んできた薬草を揉んでいてくれ」
手際よく指示を出した。
そしてそれから一時間後、私は“精神分離の魔法”を徐魔法で解いてもらい、無事元の体に戻るのことができた。
「どうだ?久々の体は?」
「…なんだか、変な感じです」
まさにそうだった。
今までは光の集合体だった体が、今は肉体として張り付いている気分だ。
手も足も自由に動かせる。
けれども、光の集合体の体はそれなりに良いところがあって、勝手も良かった。
しかし、今は今でいい。
「肉体になると不便さが増したり、痛みを受けやすくなったり、その痛みが強く感じやすい。
しかし、お前には魂を守る器が似合っているよ」
「ネモフィラさま、ありがとうございます」
私は深々とお礼を言った。
「さぁて、私はもろもろ後始末に取りかかるとするよ。
安心しな。湯治の件は、穏便に運ぶようにするから」
ネモフィラさまはそう言って、翼となった手をくるくると回すと、戸棚からペンと紙が出てきて、空中で何かを書き始めた。
そしてその紙は自分自身で二つ織りになり、またあとから戸棚から封筒が飛んできて、一緒になり、窓の外から飛んでいった。
魔法は、素敵だ。
「湯治の主に手紙を書いておいたよ。私よりも厄介なやつだからな。気を付けてくれよ。
まぁ、お前には“運命の力”もあるし、“過ぎ来し時の鏡”の能力も開花した。
もう誰もお前を殺せないよ」
「はぁ…」
良く分からない単語が飛び交い、私は混乱した。
「そのことなんですけど、詳しく聞いても良いですか」
「それは、湯治の主に聞いてみると良い。“言い伝えられた古い歌”ってなんですか?と訪ねてみるといい。
初対面で話すきっかけがあった方がいいだろう?」
「ネモフィラさま…!」
私は感動のあまり、気がついたら自分からネモフィラさまに抱きついていた。
勢いで抱きついたネモフィラは、とてもふわふわで、ふかふかで、温かく、太陽のような匂いがした。
「さぁて、私も色々と準備を始めるかな。これからが大変になるからな。
まぁ、旅人は休まれよ。帰路につくが良い」
「ネモフィラ…」
ロキはとても悲しそうな顔をしていた。
「ロキ、世話になったな。いい出会いに感謝するぞ」
ネモフィラさまはそうして、とびっきりの笑顔和を見せて、私たちは別れた。
この村に訪れた当初の目的である徐魔法は完遂した。
つぎは、体を完全に戻すために、湯治に向かう。
振り替えって、ネモフィラさまに向き直ると、彼女はとてもスッキリした顔をしていた。
しかし、これがネモフィラさまの姿を見る最後の機会だなんて思いもしなかった。
そんなことも知らずに、私たちは村に別れを告げ、新たな旅へと歩きだした。
[第2章 完]
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