怨念、そして転生
父は翌日、母や武政、そして長男の命を奪ったのは八枝子だと村中に言いふらした。
そして、八枝子が端から悪の元凶だと皆に言い回った。
村人もこの父の行動には気づいていたが、村の大地主の言うことは絶対である。
父はこう言ったのだ。
「今すぐに八枝子を村から追い出さねばならない。しかし、ただ追い出すだけでは、村に災いが残ってしまう。
もののけを駆逐するには、村人からの“協力”が必要だ」と。
八枝子は翌日、村の真ん中で磔にされた。
水も食料も一口も与えられず、一週間裸のままでさらされた。
その後、武政の父が刀を八枝子の体におもむろに差し込んだ。
当然八枝子は痛みで悶えた。
体が痛みで貫かれる感覚は、決して忘れることなく、未だに体に染み付いている。
八枝子には能力があったが、それは体の傷を直したり、痛みを緩和するものではない。
それもあって、八枝子はただただ体にできた傷の痛みに耐えるしかなかった。
痛みというのは、ましなのははじめのうちである。
傷が広がれば広がるほど、痛みも苦しみも増していく。
さらにそこに虫などの寄生虫が沸けば、痒さも増すし、痛みも慢性化してくる。
傷を触りたいのに、磔にされているためにできない。
そんなもどかしさもあいまって、八枝子は頭が狂いそうな程に脆くなっていた。
しかし、このとき、村は大飢饉に陥っており、村のものも、正常に物事を判断できる状態ではなかったのだ。
村人は、“飢饉が終わるなら”と狂ったように八枝子の体に農具や箸や過多ななどありとあらゆるものを刺してまわった。
そうすることで、飢饉が終わり、豊作が来ると信じてやまなかったのだ。
勿論、八枝子はこのまま息絶える。
遠くから見ると農具や刀が刺さった塊に見えただろう。
絶対、人だとは誰も思わない。
八枝子はカラカラの体で、最後にこう祈ったのだ。
(もう、自分のためにしか力は使わない。もう二度とこの世界には生まれ変わらない。
力が認められ、皆に求められ、そして“安らかな幸せ”がある場所に、私は永遠に生まれ変わる。
私の体に刃を突き付けたものは、一人残らず殺してやる。
そして、武政の魂が浄土に上れるように、私の人生を捧げる。)
八枝子はそうして、18年間の人生に幕を閉じ、来世での生まれ変わりを信じた。
八枝子としての意識が完全に途切れるまで、幸せだった武政との時間をゼロからすべて思い出していた。
武政の笑顔、体温、匂い、体液、思い出。
すべてを走馬灯させた。
後に、あまりにも悲惨な八枝子の生き様は、“惨憺の姫”として後世に語り継がれることになる。
それは八枝子が願ったことではなく、八枝子にとってはどうでもよいことだった。
今手も八枝子が生きた村では、“惨憺の姫”が再び悪さをしないようにと鎮魂の祭りや儀式を執り行っているという。
それよりも、武政の父がその後、河豚の毒に当たって死んだことが何よりも屈辱的だった。
母も武政も自分も苦しんで死んでいったのに、自分だけがあっけなく人らしく死ぬなんて、許せない。
だから、願った。
もしも武政の父が生まれ変わることがあれば、二度と私に関わらないで、と。
そして、最も不幸になって、と。
八枝子としての人生を終えたその後、“ネモフィラ”として転生し、大魔法使いとして異世界で名を馳せることになる。
さらにその後、“永遠の生まれ変わり”をするきっかけを手にする。
それは、ただひとつの目的のためにしている。
他でもなく、ただ自分のために。
それは、また別の話。
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