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異世界悲恋物語

武政は、八枝子と同い年の男だ。


幼馴染みの二人は八枝子が小さいときからよく遊んでいた。


八枝子が目にたすきをする前も後も変わらずに


天真爛漫な性格の武政に対して、八枝子は好意を抱いていたし、武政も八枝子を好いていた。


しかし、武政には生まれながらの伴侶がおり、二人は決して結ばれることはないと思っていた。


しかし、武政にはひとつ大きな問題があった。


武政は、生まれつき性器に異常があった。


つまり、子供の種を作れないのだ。


それは、許嫁と結婚の話を詰めていく段階で発覚し、破談となってしまった。


武政の家は、村の中でも有数の地主であり、本家だ。


さらに言えば、武政は長男であり、跡継ぎが必要な親である。


武政の下には、5人の兄弟がいるが、すべて妹たちである。


それもあってか、武政はとても面倒見がよく、心が優しく、気遣いができる子だった。


しかし、そんなの武政の素敵な性格と世継ぎは全くの別物で、本家の長男が体に難があって、それが原因で世継ぎができないとなると、武政の家も傾いてしまう。


武政の父は、実直で真面目で頭が固い。


何としてでも、跡継ぎが必要なのだ。


そこで、登場するのが八枝子だ。


結婚しても子供ができない理由を八枝子に全て押し付けようとしたのである。


さらには、何処かから子供を養子として取って、武政と八枝子に育てさせようと考えていた。


結婚話が持ち上がったとき、すでに八枝子は言葉も視力も失ったと村人全員に認識されていた。


いくら養子をつれてきても、八枝子が口外することはないと考えたのだ。


こんな状況だが、八枝子にとっては、願ったり叶ったりである。


好きな男と子供がもうけられないのは残念だが、結婚ができ、幸せな余生は送ることができる。


八枝子はそれだけでも、生まれ変わった価値を感じることができた。


八枝子の家も、大家である武政の家に嫁ぐことができるのはかなり名誉なことであり、大いに喜んだ。


しかし、神は八枝子に安泰は与えなかった。


武政には、まだ隠し通さねばならない秘密があったのだ。


それは、八枝子と武政の初夜に発覚した。


「…?!」


暗闇の中で、蝋燭の炎がゆらゆらと揺れる。


仄かな灯りに照らされるのは、武政の裸である。


17歳の体は、儚く、いたいけで、脆かった。


「…ごめん、八枝子。隠していたつもりはなかったんだ。言えなかったんだ、ずっと」


武政は必死に我慢をしていたが、目からは大粒の涙が溢れていた。


涙の滴が武政の体に落ちて、すーっと涙の跡を作った。


炎の光に反射して照らされたのは、武政の体にそびえる、“小高い丘”だ。


八枝子のよりも、少しだけ小降りなその“丘”の先端は、春に咲く桜のように愛らしい色をした蕾をつけて、緩やかなきょくせんを描いていた。


八枝子が見た武政の体には、男性の性器はなかつた。


代わりにそこにあるのは、これから膨らみを増すであろう乳房と、八枝子のものと同じ下半身だった。


武政は、まごうことなき“女”だったのだ。


瞬間、八枝子は理解した。


嫡子への歪んだ欲求が、武政の父の思考も歪ませ、女しか生まれない家系への捌け口として、武政を男として育てたのだ。


しかし、17歳ともなると、隠せるものも隠しきれなくなる。


男のように声が太くなったり、喉仏が出たり、筋肉がついてくるわけではない。


胸は膨らみを増すし、腰回りの曲線も美しさを増すし、声も女性らしくなるし、初潮も来る。


もう父の目論みは限界だったのだ。


それでも、八枝子は最高に嬉しかった。


八枝子は男であろうが女であろうが武政を愛していたし、寧ろ好都合だった。


武政にとっても、抑圧された生き方を八枝子は何も言わずに受け入れ、そして体を強く抱いてくれた。


この夜、ふたりは強く強く抱き合った。


そしてお互いに欲望をさらけ出し、体を合わせ、肌を重ね、体液を交換し、息を混ぜ合わせて、果てるまで求め合った。


この行為は、朝鳥が鳴くまで、続いた。


その2年後、なんと武政が身ごもった。


相手は勿論、八枝子ではない。


お腹の子の父は、想像もしなくない。


八枝子の人生は、この武政の懐妊で大きく狂い始める。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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