生まれながらに力を持つということー卑弥呼編
私は、生まれながらにして、力を持つものだった。
それは自分ではっきりと認識していた。
“自分は、他の人の子と違う”ということを。
母も分かっていた。
父も分かっていた。
だから、国の一番上である女王として君臨できたのかもしれない。
父と母の理解がなければ、私はただの怪異同然に扱われていただろう。
両親はどちらも神に遣える仕事をしていたからな。
私の力は当初はまじないで未来が分かることだった。
雲や風、虫たちや動物の声や動きを見ると天気が分かったり、その年の不作や豊作が判断できた。
隣の家に住むばあちゃんが亡くなることを当てたときには、それはもう驚かれたよ。
しかしな、しょうがないのだよ。
生まれもってこうした特殊な力を持つものは一定数できてしまうんだ。
私の能力は転生するごとに強化され、今はネモフィラとして、魔法まで使えるようになった。
その前は、まじないで先行きを占うことと魔法の間のような力を得ていた。
しかし、いつの世も、得たいの知れない説明ができない力への反応は良いものではなかった。
それゆえに、卑弥呼としても八枝子としても、苦しい最期だった。
この世に初めて産声をあげたとき、それはもう太陽の光が眩しいくらいの日だったので、神さまから日の光を頂けるよう日姫巫女と名付けられた。
他にもなまえがいくつもあって、“日(神)に身を捧げるもの”の意味として日御己だったり、“いつか王(陽)になるもの”の意味を持つ陽親王だったり、色々名前を貰ったさ。
まぁ、名前なんてひとつあればいいが、いくつあっても困りはしなかったがな。
物心ついてすぐに私は能力者としての頭角を表し、あらゆる場面で身の回りの人々を危険から救った。
時には暗殺を食い止めたり、流行り病を避けたり、大飢饉からも人々の命を助けてきた。
そんな噂はあっという間に広がり、政治のために私の能力を使おうとする統治家の目に留まり、国を納めることに触れる。
そして、私の的中する数々の予言で、国のトップにまで上り詰めたのさ。
最早私の名声も勢いがあって、女王として君臨するのにそこまで時間かからなかった。
女王になったのは、17歳の春だったよ。
しかし、やはり時代が私の能力を許さなかった。
理由は二つある。
ひとつは、人間は目に見えないものを信じにくいこと。
もうひとつは、目に見える暴力や圧力の方が、人は信じる気になるということ。
説明がつかない私の能力は、いつしか悪に魂を売ったものの悪い力と見なされ始めた。
前日の夜まで熱心に信仰していた者が、翌日の朝に私の命を狙いに毒を塗った刀を持って、寝室の枕元に立っているなんて日常茶飯事だった。
それでも、私はそうした出来事を事前に予期することができたので、幸いにして回避することができた。
だが、一連のそうした出来事がさらに国の者たちの不信感に拍車をかけてしまったのだよ。
過ぎたるは及ばざるが如し。
能力も高すぎてはダメなのだ。
私は80歳くらいまでは生きてね、そのあとは人身御供のために生き埋めにされたよ。
当時は40歳くらいが平均寿命だったが、私の生きた年齢も化け物のように思われていたよ。
最期は、世代交代の波もあり、私に子供がいなかったこもあって、世継ぎがいない中で反乱が起きて、そして次の時代の王に人柱にされたんだよ。
後半は、次の王に拘束されてしまって、できる占いもできず、避けることができた災害も直撃してしまった。
たくさんのひとが死んだよ。
救える命も救えなかった。
次の王は、全ての責任を私に擦り付けたさ。
まぁ、いい。
私には確信があったからね。
必ず、この記憶と能力を持って生まれ変わることができるとね。
そして、私は土の臭いを嗅ぎながら、最期は空気を吸うこともできずに、苦しんで死んでいったよ。
だから、次もしも生まれ変わったら、この能力を隠して、自分の子供を作って、“普通の幸せ”を手にするんだって決意したよ。
ひとの上にたつことはもうしたくない。
感謝されることもなく、妬まれ続ける人生なら、いっそ死んだ方がましだった。
そして、次の何百年か後に、再び日本の国で“八枝子”として産声をあげたのさ。
しかしな、私はそこでも幸せになれなかったんだよ。
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