終戦、“過ぎ来し方の鏡”となった私
記憶が流れ込む感覚は、なんと言えばいいのだろう。
でも、これが“記憶が流れ込む”ということなのかは、はっきりと分かる。
映画のフィルムのように、目の前いっぱいに様々な映像が四方八方に流れていく行く。
頭のなかで繰り広げされるこの“記憶の流入”は、あっという間に始まり、気がつくと終わっていた。
最後のフィルムは、ネモフィラさまが私の体に止めを刺そうとした瞬間だった。
「八枝子さん…という名前が異世界に来る前のものだったんですね」
「この世界で、八枝子と私を呼ぶものはお前が初めてだ」
ネモフィラさまはゆっくりと座り込んだ姿勢から立ち上がった。
顔を向き直すと、黒くなった髪が元通りの水色の髪に戻った。
「これが、この世界の神が選んだ選択なのであれば、私はそれに逆らうことはないな。寧ろ、共に手を組もうでないか」
そう言って、差し出されたのはネモフィラさまの右手だった。
「私も“運命の力”を持つものだ。神の思し召しを果たそう。
そして、お前の体も無条件で直そう。物理的な回復は、回復魔法が得意なエルフの赤髪の小娘に任せるといい。そこは、私の専門分野ではないからな。
元の体は、時の神の隠し子に移動魔法で持ってきてもらうとよいな。
準備ができたら、徐魔法に取りかかるとしよう。私の使い魔達には、あとで厳しく叱っておくよ。“運命の力”を持つものを痛め付けてしまった罰を与えなければな」
「いや、罰は良いですよ。事故だったと思うので」
「お前がそう言うのであれば、お言葉にあまえるとしよう。
そろそろパラが薬草を摘んで帰ってくる頃だ。ロキ達を呼んできてもらうか」
段取りよくネモフィラさまは、当たりを片付け始めた。
人差し指をくるくると回しながら、傾いた家具や傷ついた壁を手際よく修復していった。
私の足元に広がる血溜まりもあっという間にきれいに無くなった。
魔法とは、凄い白物だ。
「完全な治癒には、彼処がいいな。昔から、万事は湯治に限るのだよ。
ただ、そこを牛耳っている奴が、やっかいな性格だが、腕は間違いない。それに、奴はお前にとって為になるはすだ。会っていて損はない。寧ろ、会うべき定めのもとに今いるのだ」
「八枝子さま…いえ、ネモフィラさま…あなたは…」
死の縁からようやくなんとか這い出てきたばかりで、まだ頭がはっきりとせず、ぼんやりと霞がかかったような状態だ。
それに、急にたくさんの情報が流れ込んできたこともあり、頭がパンクしているのか鈍い頭痛が始まった。
「私の過去を全て“取り込んだ”のだろう?それであれば、言うことは何もない。私の魂の初代は、日本国で初めて王になった卑弥呼だ。そして、その次に農民の娘として生まれ変わった八枝子だ。まぁ、卑弥呼も八枝子も、曰く付きだったがな。
私が今ネモフィラとしてこの世界に転生され、この村で生き死にを繰り返す理由は、お前の記憶として刻まれているはずだ。そうだろ?“過ぎ来し方の鏡”よ」
ネモフィラさまの部屋はすっかり元通りにキレイになった。
まるで、あんなに大きな魔獣との戦いがなかったかのようにー。
「まぁ、まずは、お互いに体を休めようか」
そして、ネモフィラさまも何事もなかったかのように、にこりと笑いかけてきてくれた。
つまり、私は死を以て、“過ぎ来し方の鏡”となり、“運命の力”を開花させて、ネモフィラさまの魂の軌跡に触れた。
…え?どういうことよ?(笑)
誰か、詳しく説明してよー!!!-
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