元大魔法使い VS 異世界素人
異世界生活は、本当に波瀾万丈に満ちていた。
初日は体が消えかかえっていたところを赤髪の美少女エルフにキスという形で助けられた。
その後はバニーガールのようなメイドのような姿で労働をした。
その直後、時の神クロノスを父に持つ緑髪のボブカットの天使であるクロノにお姉ちゃんと慕われるようになった。
次に、馬の顔と人間の体を持つアロゴが遣える魔女のヤァヤァ、その魔女が復活させたアロゴのかつての彼女のカブイーラとも出会った。
得体も分からぬユニコーンと戦い、ロキという大切な仲間ができた。
そして、元“大魔法使い”と呼ばれ、数々の魔法を作り出した有名な創設者であり、今はこの村で奇病を治めるために人柱となって、毎年“死んで生き返る”という人智を越えた神の領域に踏み入るネモフィラさまと対峙している。
ユニコーン(ロキ)との戦いで、魔法の影響でからだと心が分離してしまった私は、その魔法の創設者であるネモフィラさまから徐魔法をしてもらわなければいけない。
徐魔法は、ネモフィラさましかできない。
交換条件は、私の心臓である。
しかし、心臓を渡してしまっては、私が死んでしまうのが確定する。
それを知っていて、ネモフィラさまは私に心臓を要求している。
かつて、ネモフィラさまも私と同じように異世界から来た者の一人らしい。
なんでも、異世界から来たものは“果たすべきこと”をするために、こちらの世界にやって来るという。
ネモフィラさまがどの時代からどのくらいこの世界にいるかは不明だが、大魔法使いになるくらいだから、相当な年数を重ねているはずだ。
そんな百戦錬磨の玄人と異世界生活一週間の素人な私では、実力は雲泥の差である。
しかし、それでも戦わなければいけない。
なぜ?
自分のため?
それもある。
けれども、いちばんはやっぱりネモフィラさまのためだ。
きっと私はそういう立ち回りで、役回りなのだろう。
お節介で、不器用で。
でも、それでもいい。
ネモフィラさまの涙を見てしまったのだ。
「誰か、会いたい人がいるんですよね?」
私は続けた。
「その人に会うために、村を利用している。そして黒幕にローブを被った人物がいる。違うなら、そう言ってください」
ダンッ
言い終わるか否かのタイミングで体に強い衝撃を感じた。
気がつくと壁に体が張り付いて、身動きが全く取れない。
電気のようなビリビリとした細かい糸のようなもので体全身が固定されている。
さらには半透明な膜で視界も覆われている。
「妄想癖が過ぎるようだな」
「これは…ネモフィラさまの魔法ですか…?」
「あぁ、そうだ。初級魔法だよ。お前には出せまい。もっと凄いのが見たいなら、特急魔法までご馳走してやるよ」
ネモフィラさまはそう言って、既に翼と化した両手を前につきだし、魔方陣を空中にいくつも作り上げた。
何色にも光輝く魔方陣から出現したのは、それぞれ炎や氷、雷、嵐が小さな玉となってこちらに向かって標準を合わせている。
さらには、いつの間にか床にも魔方陣が作られていて、見たこともない魔獣たちが次々に召喚され始めていた。
(負け戦だ。これは、完全に殺される)
さすが、大魔法使い。
元とは言えども、その力はまだ健在だ。
「お好みであれば、隕石もお前に見せてやることもできるぞ」
禍々しい殺気。
ネモフィラさまは、完全に私の心臓を狙っているし、確実に命を取りに来ている。
(これは、ロキと対峙したとき以上の大ピンチだよ)
逃げ出そうにも体が魔法で痺れて動けない。
(ここで、終わりなの?)
絶体絶命の危機に、私は大混乱に陥っていた。
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