魔法使いのお祭り
「わぁ~すごい。本当にお祭りみたい。懐かしい」
「ミーの昔いた世界でも、こんなに華やかな催しをしていたのか。すごい豊かな国だったんだな」
この村の祭りーお披露目の儀ーはまさに、元いた世界での祭りそのものだった。
そこまで大きくない村だが、商店街のような通りには、露店のように各家々がごはんや軽食を振る舞っていた。
木々には、ガーランドや提灯のようなものをつけて、さらに華やかさを増している。
恐らくネモフィラさまが行脚するであろう道には、ネモフィラさまのイメージにふさわしい水色の花びらがふんだんに散りばめられていた。
「本当に村をあげての一大イベントだね。
まぁ、このくらい僻地で閉鎖的な空間だと、こうした出来事が本当に楽しみになるんだね」
ロキは真っ白な髪に似合う真っ白な王子様のような服を着て、物珍しそうにきょろきょろと辺りを見ていた。
「あ、向こうの広場が、お披露目本番の場所みうだね」
丸い広場の中心には、高台が設置され、色鮮やかな花や果物や装飾品が添えられ、まさにネモフィラさまが座るに相応しい台座が備えられていた。
「本当にすごいね。花火でも上がりそう」
感心している場合ではなかったが、純粋に懐かしい気持ちが先行していた。
「あ、向こうの方から歓声が聞こえる」
ひときわ声が大きい方向に目を向けると、人の群がりが増していた。
そこはちょうどネモフィラさまの寝室ー私が侵入して交渉決裂をした場ーがあり、そこから彼女が出てきたのであろう。
「ネモフィラさまー!」
「ネモフィラさま!おめでとうございます!」
不老不死の姫。
毎年生まれ変わる稀有な存在。
唯一無二のその姿。
「完全に信仰の対象じゃな」
「そうね」
クロノは吐き捨てるように言った。
美しく華やかな祭りだが、とても物悲しく虚しい気持ちになってしまうのは、なぜなんだろうか。
ネモフィラさまは、御輿のように豪華に飾り立てられた上に乗り、翼と化したその白い腕を優雅にはためかせていた。
完全に擬獣化した体は村人の公認らしい。
「ネモフィラさまの羽!拾っちゃった!幸せになれるね、お母さん」
ふわりふわりとたなびいたネモフィラさまの白い羽を拾った幼女は満面の笑みで、母親に笑いかけていた。
「みなもの、感謝するぞ。ネモフィラはここに再び誕生した!
今年もこの村から災いは起きぬぞ!」
ネモフィラさまは御輿のようなものの上で叫んだ。
肩幅よりも大きなふさふさしたウサギのような耳を動かして、村人の歓声に応えた。
「今宵は祭りじゃ!皆のものよ、大いに楽しむがいい!」
再びネモフィラさまが叫んだかと思うと、両手(今は両翼)から火花のようなものをパッと天に飛ばした。
すると厚い灰色の雲で覆われていた空から光がこぼれ、あっという間に快晴になった。
澄み渡る青空の中を、まるで生きているかのように色とりどりの花火が何度も何度も舞い上がった。
そして、ヤァヤァがかつて館で見せてくれた魔法のように、空から星のような飾りや豆電球のような明かりが不思議に輝いていた。
「ネモフィラ、昔から派手好きだったし、魔法の力は健在だね」
ロキは遠くを見つめるかのような目で、ネモフィラさまを見つめていた。
お囃子の上に乗るネモフィラさまはとてもきれいで美しく、活気に溢れ、そのお着物も華やかで、本当にどこまでも盛大な祭りだった。
ただ、本当に理由は分からないが、どこかやっぱり寂しそうなのだ。
私は広場に向かって小さくなっていく姿のネモフィラさまをみんなでただ眺めていた。
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