クロノの躊躇い、心強い仲間
「お姉ちゃん!どこ行ってたんじゃ!」
縦穴式の寝床の前から、クロノが必死な顔をして走ってきた。
「ごめん、ごめん。ちょっと朝早く起きたから、散歩に行ってたの。心配かけてごめんね」
「本当に、良かった…」
クロノは今にも泣き出しそうに、瞳に涙を浮かべていた。
「クロノは未来が見えるんだよね?そしたら、私の行動も読めたりするのかな?」
「それができたら、苦労はせぬ…。クロノが見えるのはこの世の大きな分岐だけじゃ。個個人の細かい行動までは読めぬのだ。
この村に来るのも、本当は初めてではないのじゃよ」
クロノの声はどんどんと尻すぼみになっていった。
「ごめんね、クロノ。次からは、声をかけていくからね」
「うぅ…」
まだ異世界に来てから、一週間も経ってない。
それなのに、ここまで心配をしてくれる大切な仲間に私は出会ったのだ。
「ありがとう、クロノ。
そう言えば、この村に来たのは初めてじゃないってどういうこと?」
「ミー!探してたぞ」
縦穴式の寝床から赤髪の美少女エルフであるヒルナが顔を出した。
「朝の散歩か?何か用があればヒルナに言ってくれればよかったのに。曲がりなりにもミーは私の主人だから、命令があればいつでも受け入れるぞ」
「ありがとうヒルナ。ごめんね。
ロキもいるかな?みんなに言っておかなくちゃいけないことがあるの…」
そして私は先程のネモフィラさまとの事の一端を話した。
「なるほどな。やはりそのマントかローブを被った奴が裏で手を引いているのは間違いないな」
ロキは曇った空の下でも、その真っ白な髪をキラキラと輝かせていた。
「どうにかして其奴を老いたいが、何とも手段がない。やはりネモフィラさまに接触するのが一番だ」
「…だよね。それなのにごめんね。私の勝手な行動のせいで。それでも、確かめたかったんだ。
それにもとはと言えば、私が元のからだに戻るのが遅くなった結果だから…」
「そんなことはないぞよ!お姉ちゃんはいつだって正しいのじゃ。守りきれなかったクロノにも責任がある。魔力が…魔力さえあれば…
時を戻して、やり直す手もあるが…」
クロノはこの村に来てから、一段と甘えん坊になった気がする。
私のことをそっと引き寄せて、胸に当てながら抱き締めてくれた。
クロノの胸のなかは温かくて、柔らかくて、ふわふわとした良い香りがした。
「ありがとう、みんな。まだ、挽回できるチャンスはあるよね」
申し訳なさに押し潰されそうな気持ちをなんとか隠して、私はクロノの胸に体を委ねた。
「もちろんさ。僕からも言ってみよう。何かとネモフィラには貸している恩もあるからね」
ロキがキメ顔で元気付けてくれた。
「ヒルナもミーのためなら体を張るぞ」
エルフ耳をピコピコと動かしながら、ガッツポーズでウインクしてくれた。
「みなさーん!あと少しでお披露目の儀です。良い席を取りたいなら、今から準備してください!」
パラが遠くから手を振りながら、大声で叫んでいた。
「まずは、お披露目の儀だ。さぁ、行こう」
「うん!」
私は変えるのだ。
未来は変えられるのだ。
失敗しても、みんながいてくれる。
そう思うだけで、本当に心が温かくなるようだった。
私たち四人は、華やかな装飾がされて、人が増えてきた広場にまっすぐ向かった。
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