異世界生活、過去に飛ぶ
異世界生活6日目ー。
昨日の夜は眠れなくて、ロキと二人で異世界の鈴虫の鳴き声に耳を傾けながら、心を休めていた。
お互いに眠れたのは、空が白み始めた頃で、結局はあまり熟睡はできなかったものの、ロキとの距離が埋められたのは棚ぼただった。
「おはよう、ミー。昨日はあまり眠れなかったのだろう?大丈夫か?無理はしないで」
ヒルナが心配して肩に手を置きながら、わたしの様子を伺っていた。
みんなもう朝早くからどこかに行ってしまって、縦穴式の寝床にはいまヒルナと私しかいなかった。
「ありがとう、ヒルナ。やっぱり怒濤の異世界生活でちょっとずつ疲れが出てきたのかも知れない。でも、いまはネモフィラさまの解放のためにもがんばりどきだね」
「ミーは優しすぎる。もっと自分のことを第一に考えて欲しい。ミーはヒルナの主人だから、何でも命令してほしい」
「前も言ったかもしれないけど、私はヒルナと友達になりたいんだ。でも、ありがとう。できるところまでは、やってみるね」
「うむ。ミーが無事に体に戻ったらしばらくは休息をしよう。ウカも理解してくれるはずだ。また平和な日々に戻ろう」
「お姉ちゃん、ごはんできたって。ヒルナも…くれば?」
クロノが縦穴の入り口から顔だけを出して、声をかけてくれた。
「はーい!いまいくね!」
大きな声で返答をした。
「ねぇ、ヒルナ。そう言えば、クロノと仲があんまり良さそうじゃなかったけど、今はなんだかんだ順調そうだよね」
私たち三人が出会ったとき、なぜか一方的にクロノがヒルナを毛嫌いしていた。
しかし、ロキとの一戦を経て、二人の関係は修復に向かっているようには見えていた。
「そうだな。もともと私はクロノと初対面だったし、嫌いになる理由はなかったから、いまこうして少しずつ溝が埋められていくのは悪くないな」
ヒルナも先程までクロノがいた場所に顔を向けて言った。
「そうだね。みんな、もっと仲良くなりたいね。よし、じゃあ朝御飯食べに行こうか」
朝御飯は、ネモフィラさまの付き人の方が用意をしてくれた。
さながら、前にいた世界のように、旅館に泊まっている感覚でごはんを楽しむことができた。
ひとりずつお膳にごはんをきれいに装ってくれている。
ごはんお茶碗に汁茶碗、野菜を炒めたような小鉢があり、漬け物のような発酵食品もある。
みんなで丸のかたちで座って、お膳の上のご馳走をまじまじと眺めた。
「懐かしい…定食みたい」
私は感動して目を輝かせた。(と言っても、いまは感情が表情にでない)
「イズミはこんな素敵なものを前の世界で食べていたのか。うらやましいな」
「うん、本当にごはん大好きなんだ。特に納豆っていう食べ物があって、それが一番好きだな」
「“ナットウ”?それは、興味深いな。今度作って欲しいな」
「納豆か…作ったことないけど、作れるかな?
あれ、そう言えばロキは?」
「ロキは、先に村長のところに行ったみたいじゃよ。なんでも体を動かしてないと、心が落ち着かないみたいじゃと」
クロノは口の周りにごはん粒をたくさんつけて、モグモグ言いながら話した。
「ロキ…大丈夫かな?」
ひとりで行かせなければよかった。
こういうときこそ、誰かと一緒にいるべきだ。
「あ、ロキが帰ってきたぞ」
ロキは、俯きながらこちらに向かって思い足取りで歩いてきた。
「…ロキ?」
明かに村長と何かあった雰囲気を察した。
「…黒幕は、村長だ」
「え?どういうこと?!」
楽しい朝食の雰囲気から一転、灰色の重い空気が上から落ちてくるようだった。
「村長は昨日の夜に、急に村を出たらしい。それもどこかの村と会合があるとかで、そんな予定元々なかったのに。何かを隠している。僕はそう思っている」
「…そんな」
「村長は、ネモフィラを殺してるんだ。許せない…許せない…」
ロキの怒りはふつふつと溶岩のように沸いている。
「ここは、またもやクロノの出番じゃのう」
ロキに集まっていたみんなの視線が、緑色の髪をして背中から天使の羽を生やした幼女に集まる。
「村長なんぞに話を聞かなくても、過去に戻って何が起きているのかを見ればよい。そっちの方が、話は早いぞ。
村長を捕まえられても、話を素直に教えてくれるような奴には思えんしな。
どうじゃ?クロノ、すごいじゃろ?」
鼻の穴を膨らませて、クロノはどや顔で言った。
腰に手を当てて仁王立ちする姿は様になっている。
「ありがとう!クロノ!それなら、ネモフィラさまを助けられるね!」
「そうじゃろ~」
「じゃあ、行こう!ネモフィラさまを助けよう!みんなで、過去に跳ぼう!」
未来は自分の手で切り開くのだ。
異世界生活は、やっぱり波乱万丈に満ちたこんな感じじゃないとね!
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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