怪しい村、何かを隠す村長
「ネモフィラが、生け贄に…?」
どう頭を働かせても、理解できないないようだった。
生け贄なんて、物語だけの話だと思っていた。
目の前で、本当にそんな理解しがたいことが繰り広げられているなんて、受け入れたくない。
「そうなのです。ここ五年ほど、毎月のように生け贄になっていただいています。ネモフィラさまが、体を捧げるようになってからは、村人は誰一人として奇病を発症したり、笑いながら息耐えるということはなくなりました。
そして、完全に木となったあとに、村の森の中にネモフィラさまを埋めます。そうすると、翌日には立派な木になっています。まるで、ネモフィラさまが、この村を守ってくださっているみたいですよね」
「ねぇ、おばあちゃんは、何と戦っておるのじゃ?」
クロノが前のめりの姿勢で問いかけた。
「それは、村人には知らされていないのです。秘密だと、言われています。
私は奇病で家族全員を失いました。4才の息子と0歳の娘、そして夫を同時に失いました。それもあって、ネモフィラさまが情けをかけて、私に役目を与えてくれたのです。“やることがあれば、辛いことも一瞬だけでも忘れられる”と。そして、五年間ずっとネモフィラさまのお側に使えて来ました。
しかし、ネモフィラさまが何にそのお命を捧げているのか、一言も教えてはくださいませんでした。私も“聞いてはいけないこと”と思い、尋ねてもいませんが」
ここまで言って、付き人はそれまで正座していた足を組み直して、姿勢を再び正した。
「村長なら、何か知っていると思います」
生ぬるい風が吹く夜だった。
微かに揺れる付き人の黒髪が怪しく見えた。
「今日はもう遅いので、また明日村長に時間をとっていただきましょう」
付き人はそう言って立ち上がった。
「最後に」
ロキが立ち上がった。
「最後に聞いてもいいかな」
「はい、なんでしょう」
付き人がロキの方に体を向けた。
「ネモフィラは、生き返るんだよね?それって、どのくらい?」
「そうですね、おおよそ一週間ほどでしょうか。木の虛から、お生まれになりますよ」
付き人はそう言って、私たちを寝床に案内した。
ネモフィラさまが寝ている場所は神聖なところらしく、私たちは少し離れたところに通された。
今度は地面を掘ったような縦穴式の隠れ家的な場所だった。
「付き人さんのお話、不思議だったね。嘘ではないと思うけど、いろいろ引っ掛かるところがあるね」
「うむ。何やらただの生け贄ではなさそうだな」
「明日、村長含めて、聞き込みをしよう」
「…うん」
私たちはそれぞれ寝床を用意してもらった。
ただ、恐らくだがこの日は四人全員が安眠できなかったに違いない。
私たちはこの謎の現象に答えを見つけることができるのだろうか?
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