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生まれ変わるという、プレゼント

アロゴさんは、もう二日酔いから目覚めているだろうか。


夜の宴会(朝方まで続いた宴会)が終わったときに、ヒルナが目覚めて、アロゴとクロノをそれぞれベッドに連れていってくれた。


ヤァヤァに二日酔いの薬の処方や魔法で解消させるのはどうかと提案をしたら、「そんなことに魔力を無駄に使いたくない」と一刀両断されてしまった。


ヒルナは魔力が回復したようで、魔力を使ってアロゴとクロノを浮かせていた。


ヤァヤァは血も涙もない冷酷な魔女だと思っていたが、実はそうでもないのかもしれない。


僕が知っている魔女は薬草作りに没頭するオタクだったり、根暗な黒魔術ばかり極める物だったり、あまりいい印象はない。


しかし、こうして僕の願いを無償で叶えてくれるなんて、結構良い奴なのかも。


アロゴさんが寝ている寝室に来た。


とても緊張する。


誰かに何かを渡すのは本当に久々だ。


何百年ぶりだろう。


ラトゥリアに花を渡したとき以来だ。


それから僕は誰かと交流することを避けていた。


それが、こんな風に妻でもない者のために動くとは。


すべてはイズミに出会ってから変わったんだ。


やはりイズミは、使命を持って異世界からやってきたんだ。


ギシッ


ベッドがきしむ音がドア越しに聞こえる。


「ん…っ」


アロゴが起きたのか。


布と布同士が刷れる音がする。


僕はおどおどしながら、少しだけ開いたドアの隙間から部屋の様子を伺った。


アロゴはベッドの縁に腰を掛けて、頭をうなだれていた。


まだ二日酔いなのだろうか。


しかし、今はこのプレゼントを見せたときにどうなるのかが気になる。


アロゴの体調を気にかけるのであれば、明日に渡すのが良い。


だが、もともとは今日イズミの徐魔法のために旅立つ予定だったのだが、アロゴとクロノの二日酔いのために、延期になってしまった。


これ以上私的な理由で延期はできない。


「ア、アロゴ?」


僕は思いきって部屋をノックした。


「はい、なんでしょう?その声は、ロキですか?」


「うん。体調は大丈夫?ちょっと部屋に入っても良いかな?その…渡したいものがあって…」


「いいですよ、もちろんです」


その声と同時に、目の前にある扉が自動的に開いた。


「二日酔いの薬かなにかですか?お水だけでもとてもありがたいです。ご迷惑をおかけしてすみません」


小学生くらいの僕の身長と大人の大きな馬くらいはあるアロゴの身長差はとても大きかった。


「あ、あの…ごめん、その、お水じゃないんだけど、気に入ってくれたら嬉しいなって…」


「ありがとうございます。その気持ちだけで充分に嬉しいですよ。その箱がそうですか?」


「う、うん。受け取ってくれたら嬉しいんだけど」


僕は朱色の木箱をアロゴに手渡した。


「なかなかに重いですね。開けて良いですか?」


「う、うん…」


アロゴは立ったまま、朱色の木箱の蓋を丁寧な手つきで開けていった。


手袋をしているアロゴは、そつなく木箱を開けて、そしてー。


「これは、どうしたんですか?」


怖い声色で言った。


「僕からの気持ちなんだ。申し訳なくて。あなたが数年掛けて僕の命を奪うことを目的に生きていたのは知っている。けれども今は、犯人が別と分かって、残念がっていると思ったんだ。僕が犯人で、僕が死んでいれば、あなたの無念は晴れることになる。


その…ごめん。


だから、せめてもの償いで、それを、あなたに」


「もしかして、これはあなたのからだの一部で?」


アロゴは至極冷静に質問をした。


「うん。


僕が精神の核から出たとき、黒い卵から出たと思ったんだけど、僕が出たのはユニコーンの体だった。


つまり、僕は長年掛けて解けなかった自分の変身を解くことができたんだ。そうしたらね、横たわる僕のユニコーンの体弐のこされていたんだ」


「…ユニコーンの角ですね」


ここはアロゴが答えた。


「そして、私の両手を再生してくれたと言うわけですね」


アロゴは非常に頭の回転が良く、察しが早かった。


「ロキ」


僕は自分の名前を改めて言われて、物凄くどっきりした。


今から怒られるんじゃないかって、思うくらい冷静な声だった。


「ご存じの通り、私の復讐は終わってはいない。犯人を見つけて、その所業を問いただすまで私の命を使おうと思っています。


その中で、恋人の心臓をその手で引き抜いたあの手は忌まわしき悪魔の手です。そして、奥さまが僕の憎しみの心で再生してくれた両手は、私の復讐の象徴です。


四六時中、何をするにも真っ黒な煙で固めたようなあの手を見ることで、一歩一歩犯人に近づいていると噛み締めることができるのです。


ロキ、まずはありがとう。恐らく奥さまに手伝っていただいたのですね。


この手はありがたく、いただきます。ロキ、本当にありがとう。ただ」


「ただ?」


「私の復讐劇が終わるまでは、この手を自分のものにすることはまだできません。


でも、ロキも、犯人を一緒に見つけてくれるのですよね?」


「う、うん!もちろんだよ!」


アロゴは朱色の木箱から人間の両手ー手首から指の先までの両手を取り出して、羨ましそうに眺めた。


部屋に入る西日がアロゴの新しい手に光を差した。


「ロキ、ありがとう。私に新しい目標をくださいました。


やはり“終わらせる者”の別名は本当でしたね。このまま私の復讐も終わらせてください。


いつかこの手を自分のからだの一部にする日、私の復讐は終わり、そして一族の殲滅が意味のあったものになるのですね」


「うん…!もちろんだよ!」


ユニコーンの角は、万病に効くという。


伝説の一角は、アロゴのたてがみの細胞から、無事に両手を再生することができた。


これは魔法ではなく、高度な魔術を必要とした。


ヤァヤァが時をかけてまで成し遂げてくれたこの再生魔術は、アロゴを喜ばせた。


精神の核から出てきたとき、僕がユニコーンの姿を脱ぐことができたとき、僕は生まれ変わることができた。


部屋に柔らかく差し込む温かいオレンジ色の西陽が二人微笑み合う僕らをいつまでも照らしてくれた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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