ヤァヤァの隠れ家
「ヤァヤァさん、どこにいますー?」
館は庭よりも何倍も広く、ヤァヤァさんはすぐには見つけられなかった。
もう30分以上は探して歩き回っている。
その中で、二日酔いでベッドで寝ているクロノやアロゴさんが熟睡しているのは何度か確認できた。
しかし、本当に広い。
東京ドーム何個分あるのだろうか。
「おかしいなー。でも、どこかにいると思うんだけどな」
魔女にも休日はあるのだろうか。
それとも自営業的に自分で勤務や休みを決めていくワークスタイルなのだろうか。
さっぱり検討もつかないが、今はとにかくヤァヤァさんを探し出さない限りは、ロキの願いを叶えることはできない。
「うーん困ったな~」
予想以上に、ヤァヤァさん探しに時間がかかっている。
このままだとアロゴさんが起きてしまい、サプライズができなくなってしまう。
ロキが少年の心を取り戻して更正するために、このプロジェクトは必達である。
なんとかして、ヤァヤァさんを見つけないと。
焦る気持ちだけが募っていった。
「そうだ!ヒルナ!ヒルナなら、魔法で何とかしてくれるはず」
「ヒルナは類いまれなる魔法の使い手だと思っている。彼女がいれば、さらに百人力だね」
「うん、そうなの。それにね、このヤァヤァさんの館に来るときに、ヒルナの精霊魔法で嘘を見抜いて辿り着くことができたんだ。またその精霊魔法を使えば、すぐだと思うんだけど…ヒルナはどこに?」
「ここにいる」
「え?!」
思わず背筋がゾッとした。
ヒルナの話を始めてそう時間が経っていないが、すぐ後ろに彼女はいた。
「お、お化けかと思った~、びっくりさせないでよヒルナ~」
「すまない。驚かせるつもりはなかった。魔法の力が鈍らないように定期的にこうして変化の術や
透明になる術で慣らしているのだ」
ヒルナはいつもと変わらずに涼しげな顔をしている。
「そうなんだ。良かった。ねぇ、ヒルナにお願い事があるの」
「ミーの願いなら、問答無用で何でもやるよ」
赤髪の美少年エルフはにこりと笑った。
「あのね、ロキがアロゴさんにサプライズでプレゼントをしたいんだって。そこでね、魔女のヤァヤァさんの力が必要なの。でも、屋敷中どこを探しても見つけられなくて」
「なるほど。ミーの要望は察した」
「さすが、ヒルナ」
ヒルナはニッとどや顔で微笑むと、精霊魔法でプセオドスを呼び出した。
手のひらを合わせてゆっくりと開き、大きな金色の光の玉はぱんっと小さな音を出して幾千もの小さな光に散らばった。
それらの小さな光たちは蛍ように空中を浮遊し、館中に飛んでいった。
「ヤァヤァは、特異な魔女だ。きっと姿や隠れ家を隠して過ごしているに違いない。そうでなければ、館自体をあんな犬小屋でフェイクした上に、移動魔法でなければ入れない部屋の仕様にしないはずだ。プセオドスたちは嘘を好んで食べる。さぁ、プセオドスたちが向かった方に行こう」
「うん!」
私たちは幾重もの光が進む方に向かった。
「そういえばロキ、差し支えなければなんの願いをヤァヤァにするのだ?ヤァヤァも物好きだから物によっては断ることもあるかもしれない」
長い廊下を歩きながらヒルナはロキに話しかけた。
「それなんだけどね、僕のからだの一部をあげようかなって。役に立つかは分からないけど、話の足しにでもなればなって」
歩を進めながらロキはあるものをヒルナに見せた。
「これなんだけど…」
「そ、それは…」
やはりヒルナも同じように驚いた表情を見せた。
「これはヤァヤァも進んで話に乗るかもしれないな」
ヒルナはワクワクした表情になり、「急ぐぞ」とプセオドスが向かった方へ足早にかけていった。
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