眩しい涙、強がりものの弱い部分
「立ち話もなんだから、どこかに移動しようか。と言っても、私もあんまりこの館のこと知らないんだけどね」
「それなら、外はどうかな?今日はうららかな天気だし、外に素敵なお庭が見えたんだ」
「いいね!お外行こう!」
クロノの移動魔法で裏口のような部屋から入った上に、張りぼてのような内装は魔法で一気に豪邸に変えられてしまった。
外に庭があるなんて、見る余裕すらなかった。
やはり、異世界は魅力的で刺激的で全く空きの来ない場所だ。
「おぉー、すごい、ここ」
外は予想以上の場所だった。
中庭に抜ける扉を開けると、そこには、大輪の花が咲き乱れる園だった。
見たことがないような花から、バラに似たもの、ひまわりに似たもの、ハイビスカスに似たものまで色とりどりの花がところせましと開花していた。
家10軒分はある広い花畑沿いを歩いていると、細い川が流れていて、円を描くように流れる川の中心には、絵画で見たことがあるような白色の屋根がついた休憩所があった。
鳥かごのような形をしたその休憩所は、どこかヨーロッパなどの西洋の庭にあるものを思い出させる建物だった。
「あそこにしましょう」
白の建物を指差して、私たちは麗らかな陽気を感じながら、腰を下ろした。
石膏でできているその白の休憩所は、ちょうど日陰となり、ゆっくりと話をするにはぴったりだった。
大きく空いた窓からは、花たちの柔らかくて甘い香りや心地よく頬を撫でる風を感じることができた。
元いた世界で仕事に忙殺されていた頃には、決して経験することができなかった優雅な時間がここにはあった。
「さてと、お願いのお話聞いてもいいかな?」
「うん、ありがとうイズミ」
ロキは私の隣に座った。
本当にどこからどう見ても美少年である。
ロキの過去を知らなければ、恋に落ちてしまいそうなほど魅力的で端正な顔立ちに、長いまつげがより一層色気を増している。
淡い私の恋は、もしかしたら異世界にあるかもしれない。
現実世界で恋人がしばらくできなかったのは、異世界で恋人ができると言う神様からの啓示だとしたら最高なのになぁと妄想を広げていた。
「あのね、僕は今までたくさん悪いことをして来たと思う。僕の見栄っ張りな性格でたくさんの人を傷つけてきたのは、僕の幼さが原因だと思うんだ。
でも、もしも人生をやり直せるなら、もう一度ここから、やり直したい。誰かのために、役に立てる、良いことができる存在になりたい」
ロキはゆっくりと話し始めた。
「うん、すごく、素敵なことだと思う」
「まずは、そう僕に思わせてくれたイズミ本当にありがとう。僕は君に出会わなければ、今ごろまだ森で一人さ迷っていたはずだ」
「ううん。それは、ロキの潜在的な優しさだと思うよ」
「イズミは決して言ったことを否定しないね。多くの者に愛されてきたはずだ」
「そうだと、良いけどね」
「そうだよ。人のうちなる性格はオーラで見えるからね。僕には優しすぎるほどのイズミのオーラがこの目に見えるよ」
そう言って私を見つめる赤い瞳は、あまりにも真剣で、直視するには照れてしまう。
「そうだ!お願い事!本題のお話ししよう。私に何が手伝えるかな?」
「僕のからだの一部で、アロゴのことを助けたいんだ」
「アロゴさん?からだの一部?」
「うん。結果的に違ったけれども、彼は僕を追ってここ何年も生きてきた。僕なりに少しでも罪滅ぼしをしたいんだ」
「それは、いい案だとは思うけど、からだの一部って大丈夫なの?痛いんじゃ…」
「問題ないよ。これを見て欲しいんだ」
「これって…」
ロキが何気なく見せてきたものは予想外のものだった。
「そう、これで彼を救いたい」
ロキは続ける。
「でも、僕一人ではできない。だから、ヤァヤァの力も借りたいんだ。あの強大な魔女であれば、何かできるはずだ」
「うん。うん!もちろんだよ。今からヤァヤァさんにお願いしに行こう」
ヤァヤァさんもアロゴさんには何かしら形を返したいはずだ。
きっと、このサプライズは喜んでくれるはずだ。
「ちょうどアロゴが二日酔いで寝込んでいるこの隙にできないかなって」
「それならヤァヤァに直接お願いすればいいのに」
「それは…なんだかちょっと怖くて」
「怖くないよ~。確かに見た目はいかついと思うけど…」
「ううん、違うんだ。もう僕自身、傷つきたくないんだ。でも、イズミなら僕のことを無条件で受け入れてくれるって思ってさ。見方が欲しかったんだ」
「それなら」
私は腰を掛けていた椅子から立ち上がった。
「みんな、あなたの見方だよ」
そのとき、ロキの顔に太陽の光が当たった。
「ロキ、泣いてるの?」
「うん、そうみたい。僕は泣き虫になったみたい」
誰かの成長をそばで見られる。
これほどまでに、価値を感じることはないのかもしれない。
私とロキはヤァヤァさんを探しに再び館に向かった。
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