二日酔いの宵の明け、ロキの願い
「えっ?!二日酔い?!」
とても目覚めのいい朝だった。
ヒルナが私より先に起きて、回復魔法で体力を戻してくれたようだ。
さすがのヒルナも昨日のフェンリルとの戦闘で疲れていたようで、寝る前に魔法は使えなかったそうだが、一晩寝て体力が回復したらしい。
それもあって、朝イチに主人である私の体力を気遣ってくれた。
私の体は引き続きベッドの上で手を組んで横たわり、魂の部分だけ抜きでた光の結晶体が、私の意識として動いていた。
「二日酔いって、みんな一体あのあとどのくらい飲んだのよ…」
「私は無睡だが、他のメンバーは朝方の鳥が鳴くまでは飲んでいたな。特に重症なのはクロノとアロゴだ」
「嘘…」
「そうだな。今朝早く起きたのだが、その時ですらまだどんちゃん騒ぎをしていた。そのあとすぐに静かになったと思って見てみると、数時間前となんら変わらないヤァヤァと床に寝るクロノとテーブルに突っ伏すアロゴとうとうとするロキが食事処にいた」
ヒルナは淡々と報告してくれた。
「だって、今日は除魔法をしに行くって、みんなで約束したのに…」
みんな、私のからだのことなんてどうでもいいのだろうか。
「イズミよ、不安がることはない。一日や二日で大きく影響することはないはずよ。みな、先の出来事で心身ともに疲労していたのだよ。大目に見てやってくれないかな。
特に、アロゴはさ」
アロゴさん…。
ヤァヤァさんが誰かを特別扱いするなんて、不思議だ。
「アロゴはさ、本当にここきてもずっとずっと復讐のことばかり考えていたのだよ。それはもう悪魔に取り憑かれたかのようにね。この屋敷につれてきた最初の頃は、ごはんもろくに食べず、部屋の隅でうずくまって、何かをずっとぶつぶつ話しているような寝暗や奴だった。ここに置いても食事代だけかかる奴なんか要らないからな。妾の退屈を解消して、働いてくれる奴が欲しかったのだよ。
でもな、ある日、ふと声をかけてみたんだよ。“復讐をしてみたらどうか”ってね。そしたらさ、水を得た魚ように生き生きとし始めてしまってな。そこから復讐のために手をつけてやったり、私にユニコーンのことを聞いたり、その対価として屋敷の仕事をするようになったのだよ。
アロゴはもともと素質がある青年だったのだろう。何をやっても卒なくこなしていた。しかし、復讐だけは頓挫していてな。
だからこそ、今回は藁にもすがる思いでいたのだろう。全く眠れなかったと言っていたよ。期待していたところがあるのかもしれないな。しかし、収穫があって良かったじゃないか。ユニコーンの仕業じゃないと分かっただけでも、大きな進展だよ」
ヤァヤァさんがこんなにたくさん話す人だとは思わなかった。
しかし、彼女も長年アロゴさんと一緒にいたことで、情が沸いたのかもしれない。
「そもそもは、妾が彼に吹っ掛けてしまった話でもある。妾にも責任の一端があるからな。お主が肉体に戻れなくなったことも、遠からず私の責任でもある。力になるぞ」
「ヤァヤァさん、ありがとうございます」
「では、今日は休息日だ。館でも散歩しながら、息抜きをするとよい」
そう言うとヤァヤァさんは、魔女の長いマントを翻して、長い廊下の奥に姿を消した。
「さて、と」
ヒルナはどこだろうか?
一人でいても、どう時間を過ごしたらいいかわからない。
キョロキョロとあたりを探し始めたときだった。
「イズミ」
私を呼ぶ声が聞こえた。
「誰?」
「イズミ、僕だよ」
振り替えると、そこにはロキがいた。
「あ、着替えたんだね」
ぼろぼろの白い服を着ていたロキだが、服を貸してもらったらしい。
立派な青年になっていた。
さすが美少年だ。
騎士のような白を貴重とした服も軽々と着こなしてしまう。
「あの、お願い事があるんだ」
ロキはもじもじしながら言った。
「私でよければ何でも」
今日は今日で、楽しくなりそうだ。
私はワクワクと胸を高鳴らせながら、ロキの願いを聞いた。
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