巨人出現?!
私には感じとることができないものの、白の少年ははっきりと“何か”の存在を感知していた。
「なんだろう…多分だけれど、“上からくる”気がする」
戦闘体制で身構える白の少年は、一応私を守るような姿勢で、私を背後に回らせた。
裸も同然な私は狼狽えることしかできずに、おどおどとするしかなかった。
ぐわんっ
と床が大きく波打った。
「なんだ?」
「地震?!」
「いや、地震ではない!これは…」
床が大きく動いた余韻がまだ感覚器に残っている。
まるで水風船の中で、なんとか平衡感覚を保っているかのようなそんな不安定かつ大きな地面の不安定さを感じた。
「ちなみに、地震の起源は僕にあるんだ。僕が蛇の毒を体に浴びたときに悶えた衝撃が地面に伝わることで起きている。僕が解放されてからは、地震なんて起こっていない。だとするとこれは…」
一度大きく床が動いただけで、そのあとは何もなかった。
さっきの揺れが嘘のように、しんと精神の場が静まり返った。
「収まった…?また来るかな?」
私のからだ(精神のみを取り出した光の集まりのようなもの)は、若干地面からは浮いているので、直接的な緩衝はないものの、重力が動くような変化は十分に感じることができる。
「このオーラは、なんだかそこまで危険な感じはしない。殺気はほぼない。近づいてくるぞ。あなたは僕の後ろに隠れて」
「う、うん」
言われるがままに私は再び何者かが来るまで待ち構えた。
ぽろりと、何かが私の頬に触れた。
もちろん、肉体は今所持していないので、あくまでも“頬がある位置”という感覚的な話だ。
頭上から埃よりも大きめの黒い破片のようなものが降ってきた。
「これ…何?」
落ちた破片を調べようと、体(光の玉)に付着した断片を見てみる。
(なんだろう、これ。卵の殻みたいな軽さだけど、真っ黒。温泉卵の殻みたいな感じかな。軽くて薄くて、脆い)
パラパラ…
破片は、断続的に上から落ちてくる。
まるで、この空間に“天井のようなもの”があるかのように、降ってくる。
上で何かが起きていることは、確かだ。
「ねぇ、少年。上で何かが」
起きているよ、といいかけた。
このとき私は二つのことを頭で考えた。
一つ目は、少年の名前をまだ知らなかったこと。
さすがにそこそこ長い時間を共に過ごして、知られざる過去を教えてくれたのに、私はまだ少年の名前すら呼べていない。
落ち着いたら少年の名前を聞こうと思ったのが、一つ目の頭で考えたことだ。
もう二つ目は、自分でも理解できないこと。
真っ暗なはずだったこの精神の核がある精神の場に、一筋の光が差し込んでいた。
スッとまっすぐ延びるその光の根本を探そうと、視線を上に向けると、そこには見たことがある少女の姿があった。
それは、この世界に私が初めてきたときに、親切に手取り足取りこの世のことを教えてくれて、消え入りそうな私にキスをして、主従契約を結んでくれた、あの赤髪のエルフである。
ついに私にも天からのお迎えが来たのだなと察した。
そうでなければ、この状況はどう説明をすべきか。
だって、その赤髪のエルフの顔は太陽よりも大きくて、まるで巨人のようにゆったりと動きながら、今や割れた卵の殻のような中にいる私たちを見つけて喜んでいたのだから。
「ヒルナ…大きい…」
ビルの5階建てよりも、10階建てよりも大きなヒルナは、眩しいくらいに辺りを照らす太陽の影になりながら、
「お待たせ。ごめんね、遅くなっちゃった」と答えた。
そしてその声も、巨人の名に相応しいくらいの大きな声が耳をこだまさせた。
死んだはずのヒルナが、巨人になって生まれ変わった?!
誰か、分かりやすく説明をしてくれ!
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