命の危険、再び
「そもそも、あなたは僕を助けるために来たと言っていたけれども、どうやって助けるつもりだったの?」
白の少年はその整った美形の顔をこちらに向けた。
睫毛も眉毛も真っ白で、ふわふわの髪は、どこかのモデル雑誌から出てきたコスプレイヤーにしか見えない。
「本当はね、アロゴさんっていう人があなたのことを殺したがっていたから、何とか平和的解決ができないかなーって思って来たの。
でも、私たちは力では対抗できないから、内側から攻めようってことで、肉体を一時的に捨てて、精神の核に行くことにしたんだ」
そういうと、白の少年の顔が曇った。
「…あなたが体から離れてどのくらい経った?」
「うーん、どのくらいだろう?多分丸一日は経っていないし、多分二、三時間くらいかな」
「…それは、手遅れかもしれないよ…」
「…え?どういうこと?」
「ここの精神の核がある精神の場と外界とは時間の流れが全く違うんだ。ここで過ごす時間の約十倍が外の世界の時間の流れの早さなんだよ。
肉体を離れるときに、術者に言われなかった?この魔法にはタイムリミットがあるって。それを過ぎたらどうなるって説明があったはすだ」
「そういえば…」
決戦前夜にヒルナとクロノに口酸っぱく言われていた。
頭では分かっていたが、いざとなると忘れてしまっていた。
それに、ヒルナもクロノも白の少年の息子の大狼フェンリルによって今はあの世に行ってしまっている。
術者が亡くなれば、魔法が解けないことくらい私だってなんとなく察しがついている。
「もうだめみたい。私の体ももう二度と元には戻らない。同じだね」
「ううん。僕がそうはさせないよ。僕だって無駄に長生きしているわけではない。ラトゥリアや神族から学んだことはたくさんある。僕が知る中で一番の徐魔法使いを紹介しよう」
「ありがとう」
「そうと決まれば、ここから出ようか」
旅は道連れ世は情け。
ここでこうして白の少年と出会えたことも、何かの縁であり、奇跡なのかもしれない。
そして自分で何もできなかったヒルナとクロノの死は、避けられない定めだったのだ、と少しずつ受け入れることができてきた。
「さぁ、いまはこの精神の場から出ようか。そして僕のフェンリルがしてしまったあなたの大切な二人のためにお墓を建てよう」
「うん、そうだね」
私は完全に光の一部となった自分の体を自由に動かせるようになり、こくりと頷くように上下に動かして見せた。
「ちょっと待って」
白の少年の目付きと声色が変わった。
「何だか様子がおかしい」
「え?どういうこと?」
「先程と違う波長を感じる」
何もないこの真っ暗空間に再び緊張感が走る。
次は何だ?
私はまた命の危険を感じ始めていた。
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