兄弟殺し
「ずっとここに、いるつもり?」
白の少年は、心配をしたような口調で、私に話しかけた。
私の塞ぎ方を見て、しばらく何も言わなかった白の少年だが、さすがに罪悪感を感じ始めたのか、贖罪のつもりなのか分からないが、声をかけてくれた。
「…分からない」
ずっとここにいるべきではないのは、わかっている。
ここは私の居場所でもないし、どこかに行かなければいけないのは言われなくても理解している。
「…どこに行ったらいいか分からないの」
今さらヤァヤァのところに戻っても、見せる顔がないし、アロゴに大きなことを言った手前、どうしようもない。
ヒルナもクロノもいないので、ウカの家に帰っても二人を思い出してしまうので、より辛さか増すだけだ。
せめて二人の遺体に餞でもしてあげるべきなのだろうが、あんな大狼に二人がやられたと聞くと、相当悲惨な事故現場になっているはずだ。
成人男性の身長よりもあるあの長い爪でやられたら、ひとたまりもない。
「じゃあ、暇潰しじゃないけれども、僕の話を聞いてくれる?」
「…」
私はいいともダメだとも言わなかった。
「これは独り言だからね。あなたは、初めて僕の気持ちに同調してくれた人だ。だから、僕もあなたの力になりたい。フェンリルがやったこととは言え、主人であり親である僕にも責任の一端はある。少しでも、あなたの心が晴れるように、僕のつまらない話を聞かせてあげる」
そうして、白の少年は、自分の過去について話し始めた。
僕はもともと巨人族の生まれだった。
だが、僕は巨人属なのに、とても小さくて、弱くて、細かった。
それもあって、周りからはいじめられる対象になっていた。
僕はいつか僕をバカにした奴に仕返しをするとことだけを生き甲斐にして生きてきた。
見た目の体格では到底勝てなかったので、僕は武力ではなく、頭脳で勝とうとして策略を練るようになった。
それがゆくゆく僕が“トリックスター”と呼ばれる云われになる。
そんな中、僕は他の人から認められるために、神族に弟子入りすることにした。
僕はこの持ち前の頭脳の高さと、美貌を生かして、難なく神々たちの仲間入りをすることができた。
しかし、僕の野望はここで終わらなかった。
神族の仲間に入ることは、事前に提示された条件をクリアすればできることだった。
その条件は決して易しいものではないが、努力をと命をもってすれば、達成できるくらいのものだ。
それに、僕は魔術だけではなく、変身の術式も心得ていたので、ありとあらゆる場所に変身をして潜り込んでは、情報収集を意図も簡単に進行した。
だから、神族は甘いんだと薄々感じていた。
人間への慈悲や神への忠誠心なんてくそくらえだった。
そこから、僕は神族のトップに立ち、さらには歴史に名前を刻むことを画策した。
もう誰にも指図されない、いじめられない、蔑まされない“僕の時代”を作るために、奔走し始めた。
それがー。
「それが、僕の犯した最大で最悪な、世界から光を失わせた“兄弟殺し”さ」




