白の少年の告白、そして大狼の出現
私は白の少年の隣に座った。
完全に殺気が消えると、何処にでもいる普通の少年にしか見えなかった。
小さくて、か細くて、弱々しいこのからだのどこから、あんな殺気を放つのだろうか。
きっとこの少年の生い立ちや過去に秘密があるのは明白だろう。
私は再び声をかけた。
「大切な誰かを失うって、本当に辛いよね。何の前触れもなく突然その日はやってきて、いきなり奪っていくの。ごはんも喉を通らなくて、何をするにも思い出してしまって、全く手につかない。
でも、私は気づいたんだ。そのくらいその人を大切に思っていて、愛していんだって」
「…うん。僕にも分かる。いまでもラトゥリアは、僕の中にいて、笑ってくれている。つまり、これが、生きているってことなんだね」
大切な人のことを話す白の少年は、とても満足そうに、そして嬉しそうに微笑んだ。
「笑うと、本当に子供みたいで、かわいいね」
境遇さえ違えば、公園や村の広場で楽しく駆け回る普通の少年だったはずだ。
「あなたは、この世界のものではいね」
白の少年は私の方を見て言った。
「あ、分かるの?」
「うん、分かるよ。オーラというか、匂いというか、内側から出る力や波が、この世界のものとは違う」
「ふーん、そうなんだぁ。私何か違うものが出てるんだね」
「うん。それに、何か大きなことに関わるオーラを感じる」
「大きなこと?」
「うん、それは僕には分からないけれども、そんな力の流れが見える」
何か、大きなものー。
それは、ずっと私が求めてきて、成し遂げられなかったものだ。
この世界であれば、私も一瞬は輝けるかもしれない。
「きっとそれは、今目の前にいるあなたを助けることなんだと思うよ」
白の少年は、私の言葉を聞いて、柔らかく笑った。
絹よりも柔らかく、太陽よりも温かい、そんな素敵な笑顔だった。
「ありがとう。今まで僕は、あなたのような優しさを向けられたことは、ラトゥリア以外になかった。みんな僕を邪険にして、命を狙ってきていた。だから僕は強くなるしかなくて、いたずらをしたりしてきたんだ」
「そのいたずらっていうのが、アロゴの街を襲撃した理由ということ?」
「アロゴ?」
「あぁ、半分馬で半分人の姿をした者なんだけれども、あなたは数年前その村に火をつけて、村を退廃させたんでしょう」
白の少年は黙った。
記憶を思い出しているかのようだった。
「…違う、それは僕じゃない。確かに僕はその村にいた記憶はある。でも、僕がその村に降り立ったときには、すでに村は大火でほぼ焼け死んでいた」
「じゃあ、村に火をつけた犯人は別にいるってこと…?」
「少なくとも僕はやっていないから、他にいるということだ」
ますます謎は深くなってきた。
真実に近づいたかと思えば、急に遠ざかっていく。
犯人探しはまたやるとして、今はこの白の少年に向き合いたい。
「ちなみに、アロゴのという馬顔の青年が自分の手で恋人の心臓をえぐったみたいなんたけど、それについては、あなたは関係ない?」
「…それは…ある」
躊躇いながらも、はっきりと答えた。
「なぜ、そうなってしまったの?アロゴに何か恨みでもあったということ?」
白の少年は首を振った。
「彼のことは知らない。けれども、僕は羨ましかったんだ。僕は恋人と幸せになれなかった。だから、世界中の幸せそうな恋人が憎らしかった。僕を残して幸せになるなんて許せない」
「話してくれてありがとう」
私はひとまずは真実を話してくれたことに対して感謝の気持ちを伝えた。
「今度はあなたをそうさせてしまった過去についてお話ししてもらってもいいかな?」
「僕の話でよければ」
「あなたの話がいいのよ」
「あなたは、本当に不思議な人だ。異世界からくるものは、何かしらの使命を与えられてくるらしい。あなたの使命が分かったら僕に教えてほしい」
ドンッ
穏やかに話しているときだった。
目の前にとてつもなく大きな狼が現れた。
灰色の体をして、首には錆びた足枷のような首輪をして、長い尻尾を揺ったりと揺らしながら、息を切らして白の少年に近づいてきた。
口からだらだらとヨダレを垂らしてくる姿はまさに獣だ。
一難去ってまた一難。
さて、この状況はどうしたものか。
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