さぁ、お仕置きの時間だ
無音の森の中で、クロノの緑色の髪はとても美しく馴染んでいた。
彼女の深緑色の瞳には、真っ白な野獣である獰猛なユニコーンがとろけるようにして、膝にもたれ掛かっていた。
しばし時間が経ったこともあり、クロノも大分落ち着きを取り戻してきた。
こう見えて、クロノは小学生くらいの少女にしか見えないが、実は何十年・何百年と生きているらしい。
年を重ねても老いない理由は、父が時の神クロノスであることが一番大きいようだった。
さらにクロノスの末っ子として、表舞台に出ないほど大切に寵愛を受けて育ったほどに、それこそ神の力を全身に浴びて大きくなった子だ。
賢く勇敢な印象を受けたクロノは、なぜかは分からないがヒルナを初対面の時から嫌っていた。
しかし、今は同じ目的のために、文字通り身を張って戦っている。
赤い目をしたユニコーンは、完全にクロノの膝の上で寛ぎはじめた。
「クロノ…」
私たちは見守ることしかできないが、作戦通りにいけば必ず上手くいく。
「ユニコーンさん。この手を直してくれる?」
ヒルナは手にしていた白い蕾の花束の中からゆっくりとあるものを取り出した。
ユニコーンはまどろんだ赤い目でそれを視界に入れた。
「あなたの立派な角には、世の中の不治の病を癒して治す力があるのじゃな。この闇にまみれた手をどうか治してくれないか?」
ヒルナが取り出したのは、アロゴの手だった。
手と言っても、手袋の中にあるあの黒い煙を固めたようなもので、アロゴの憎しみや悲しみといった負の感情をヤァヤァの魔法で一時的な形にしただけのものだ。
ユニコーンの角には万治の力があると言われている。
狂おしいほどに愛した処女の前であれば、ユニコーンは傷も癒してくれるはずだというのが、私たちの作戦である。
もしもできないのであれば、それはユニコーンではない。
赤目の野獣ユニコーンは、じっとその手を見ると、何事もなかったかのように再び目を閉じて眠りにつこうとクロノの膝の上にもたれ掛かった。
クロノはこちら側に視線を送った。
ヒルナの血を少量飲んだ蛇の視界越しに、モニターに移してクロノの様子をとらえていたが、クロノには何処にその蛇がいるのかがすぐにわかっていたようだ。
「どうやら、その通りのようだな」
「そうだね」
私たちの思惑は当たった。
「あの一角獣はユニコーンではない。“ユニコーンの形をした何か”だ。私たちはそれを突き止めなければいけない。それが私たちの指命だ」
「ミーの言う通りだ。
ヤァヤァとアロゴの話を聞いて違和感はあった。ユニコーンは、基本的に深い紺色の瞳をしている。しかしアロゴが大火の中で見たユニコーンはまさに火のような赤い色だった。
しかし二人には処女性がなく、ユニコーンを捕まえるどころか、近づくことさえ許されず、事実を解明することが不可能だった。
いまクロノのそばで寛ぐ奴は、ユニコーンの皮を被った偽物だ。ユニコーンの肩を持つわけではないが、風評被害も甚だしい。これは捉えて凝らしめなければいけない」
ヒルナは光魔法でできた画面越しに、ユニコーンを睨んだ。
どんな理由であれ、自分の姿を変えてまでも、犯して許される罪はない。
「さぁて、ヒルナお仕置きの時間ね」
「ミー、そうだな。お仕置きは私の得意分野だ」
ユニコーン殺し作戦は、これから佳境を迎える。
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