ユニコーン殺し
「ユニコーンを殺すって…どういう意味ですか…?」
針のように張りつめた空気だった。
「あぁ」
とヤァヤァは思い出したかのように息を漏らして、「やっぱり気になるよな」と続けた。
金色の目をしたこの魔女は何を考えているのだろうか。
「個人的な、因縁かな」
笑いながら言うこの言葉には相当の思いが込められているように感じる。
顔は明らかに笑っているのに、心は氷のように冷たいと一目瞭然だ。
「個人的な情でそうしたことはできない。私たちは他ならぬ主人であるウカの頼みでここに来たのだ。私情ならご自分で解決されたらどうだろう」
ヒルナは一段と真面目な顔をして魔女に向かって言った。
クロノは未来が見えるのか、ここでは何も言わずに膝の上にいるムァを抱き締めながら真っ直ぐにヤァヤァを見つめていた。
「私には奴を…ユニコーンを仕留めることができないんだよ。でもな、私には奴を仕留めなければいけない理由がある。そしてそのためには、必要な人材がある。それが御主たちだ」
「そして」とヤァヤァは言葉を続けた。
視線だけを側に立つアロゴに向けて、「別にユニコーンの種族を全て消し去ってほしいと言うわけではない。一匹だけ、アイツだけをこの世から居なくならせてほしいのだ」
端正な顔立ちをした馬顔の質実アロゴは深く一礼をして、「奥さま、ここからは私の言葉で皆様にお願いをしてもよろしいでしょうか」
やけにかしこまった雰囲気に、並々ならぬものを感じた。
依頼主はヤァヤァではなく、アロゴのようだ。
「奥さまの言う通り、世の中のユニコーンを全て駆逐してほしいというお願いではございません。あるユニコーン一匹を仕留めてほしいのです」
「まずは話を聞かせてもらおう」
ヒルナはその真紅の瞳をアロゴに向けた。
「もちろんでございます。あのユニコーンは、私の家族をそして、私の大切な恋人の命までも奪いました。これは復讐という名の何者でもありません。しかし、これは私情ではなく一族をかけた思いなのです。どうか、お受けいただけませんか」
アロゴは涙こそ流さないものの、怒りに拳を震わせているように見える。
「辛い出来事だったな。何かそうなってしまったのには理由があるのではないか」
ヒルナは冷静に説いた。
「理由は本人にしか分かりません。しかし、一夜にして一族は血の海に飲まれました。その犯人は奴と言うことしか分かりません。唯一生き残った私は、奥さまに拾われていまここにおります。私の命があるのは、憎きあのユニコーンを倒すためだと信じています」
「そのユニコーンとはどういう者なのだ?検討はついていそうな口振りだが」
私はただただ話を理解するのに必死だった。
「はい。其奴の名前は、パルテノと言います。二度と口にしたくない名前なので、この一回で覚えてください」
「あぁ、しかと覚えた。では、詳しく聞かせてもらおう。判断はそれからだ。話は二度と言わせない。一回で全て覚える」
「ご理解いただきありがとうございます。それでは、我が一族が一夜にして滅んだ血の夜の話です。ユニコーンが奪った数々の命と未来。忘れもしない100年前の夏のことです。月が高いところで輝く日、あのユニコーンの角で我が一族が串刺しになり、餌食担ったあの忌まわしい日のことをどうか忘れないでください。そして、このお願いをどうかお受けいただきますようお願いします」
そうして、アロゴは遠くを見ながら昔話を始めた。
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