新たな旅、魔女の島へと移動魔法
「やっぱりヒルナも一緒なのか?」
クロノはふてくされながら、ヒルナに聞こえないように私に耳打ちをした。
「一緒に行くよ。実は私とヒルナは契約を結んでいるから、一緒にいないといけないんだ」
「え…そうなのか?!」
クロノは驚いて目を大きく見開いた。
「そういえば、私のことお姉ちゃんって呼んでくれてるけど、あなたのお姉ちゃんに似てるのかな?あとヒルナのこと好きじゃないみたいだけど、昔なにかあったの?」
私もクロノの真似をして、体を屈めて耳元で小さな声で言った。
「…言えない」
「うん、大丈夫だよ。言いたくないこともあるよね。でもね、ヒルナはとってもいい子だから、いいところをたくさん見つけて、好きになってほしいな」
「…」
クロノは何も言わなかった。
ただ、私の服の袖を掴んで、じっと涙を堪えているだけだった。
「ミー!ウカがミーの服を貸してくれるって。その服じゃ動きづらいだろうって」
家の中からヒルナが大きな声で呼び掛けてきた。
「本当!?嬉しい!今行くー!クロノ、ちょっと着替えてくるから待っててね」
ちょうどよかった。
元いた世界ではこの紺色のスーツはなんてことない服装だったが、さすがにこの世界では浮いている。
私はヒルナが用意してくれる服を楽しみにしながら、家にと向かった。
クロノが含みを込めた目で私をじっと見ていることをには全く気がつかなかった。
「いやーん!これ可愛い!かっこいい!素敵!」
ヒルナが用意してくれた服は、完全にウカの趣味が入っていたが、とても異国風の色が強いものだった。
元々いた世界で着ると完全にコスプレになってしまうが、周りのみんなも同じような服装なので、私が着ても全く違和感はない。
紺色の脹ら脛までの長いマントに、ちょっとへそが見える丈のベアトップに、絶対領域を残した薄手の紺色のタイツに黒色のブーツ、そして腕は大胆に肩から露出するも、グローブは装着するというお洒落な仕様である。
さながら全体的に紺と黒という落ち着いた色でまとめられているため、派手さはないものの統一感はあって、私の色にもあっている。
まるで魔女のような出で立ちだが、とんがり帽子がないので、魔女感は抑えられている。
「ミー、よく似合っている」
「ありがとう、ヒルナ」
「よし、準備万端だな。婆さんの依頼は行かないと教えてくれないらしい。何かあったらまた鐘で教えてくれ。まぁ、婆さんのことだから、そこまで無茶なお願いはしないと思うが」
ウカのお婆さんも、ウカと同じようにウシのようなカバのような出で立ちなのだろうか。
外に出ると、クロノが地面の石を蹴りながら、迷子の子供のようにいじけて立っていた。
「クロノ、お待たせ」
クロノが顔を挙げて、私の服を見るとまた泣き出しそうな表情になった。
とても感情的で繊細で涙もろい存在なのかもしれない。
「その幼さで移動魔法を操れるとは相当の鍛練を積んできたのだな。ありがとうクロノ。私も光魔法は使えるから、何かあったら頼ってくれ」
ヒルナはクロノの肩に手を置いて、お礼を言った。
クロノは嫌そうな顔をしながらも、誉められることについてはまんざらでもなさそうな顔で「ふん」と言っていた。
この二人が仲良くなるのは時間の問題かもしれない。
「では、行くぞ。場所は、ここから3日分飛んだ先にあるヘカテー島のてっぺんにある村じゃ」
クロノは私たちの前に立ち、どこから出てきたのか頭にムァ(クロノの使い魔)を乗せて、呪文を唱えた。
すると三人が入るよりも大きな魔方陣が突如足元に出現して、眩しい光を放った。
魔方陣に刻印された文字や模様から放たれる光はとても強く、同時に風も巻き起こるので、目を閉じなければいけないほどだった。
「いざ」
その掛け声と共に一瞬で目の前が真っ白な光に包まれた。
私たちはウカのお婆さんがいる場所へテレポートしたのだった。
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