幼女の魔法、そして予知能力、飛行能力
肩までの緑色の髪を揺らしながら、泣き晴らした目を力強くこちらに向けてくれるこの羽が生えた天使のようなロリは一体何者だろうか。
異世界生活は今日で二日目で、自分でも不思議なくらいに目の前に現れる不思議なことに対しての耐性が付いているようだ。
確かにアニメや漫画などに登場する異世界転生をした者達は須らく物事に対して冷静に振る舞っている。
これが異世界パワーか…なんて、悠長なことを考えていたが、目の前の天使ロリータは焦っているようだった。
「おねえちゃん、急がないと」
「急ぐって何を?」
「早くこの世界から出ていかないと」
(この子、私が異世界から来たことを知っている…?)
「どういうことかな…?」
「いいから、早くここから出よう!そうしないと…」
「そうしないと?」
ここまで言って、緑髪のロリータ天使は口ごもって、また目に涙を浮かべた。
どうやら訳ありらしい。
「あなた、名前は?」
「やっぱり…」
もうどうしたことか、さっぱり分からない。
緑髪のロリータ天使のすぐ後ろにいるウカも困った表情で頭をかいている。
「困っているようだ。助けてあげるよ。言ってごらん」
「ヒルナ」
私の後ろに立っていたヒルナが、救いの手を差し伸べてくれた。
「迷子かな。おうちの人とはぐれて混乱しているのかも」
「うむ。そうかもしれないな。であれば、町の警備屋に行くとしよう」
「ヤダ!クロノ、ヒルナのこと好きじゃない!」
「…え?」
思わずヒルナと私は顔を見合わせた。
なぜこの少女はヒルナの名前を知っているのだろうか。
“しまった”という表情を見せるクロノと名乗る幼女は、明らかに動揺していた。
「あなた、ヒルナの友達なの?」
「違う、ヒルナ友達じゃない」
「ヒルナはこのこの子と知らないんだよね?」
「うむ。初対面だと思う」
不穏な空気が流れる。
この子は一体全体何者なのだろうか?
「クロノ、ウカの奴隷になる!契約する」
幼女は突然ウカのことを勢いよく指差して、仁王立ちで力強く立った。
涙が伝った痕が太陽の光に照らされてキラキラと光っている。
さっきまでのグズグズが嘘のように自信に満ちている。
「契約かぁ…俺のところは二人で満足してるんだよ。これ以上増やす予定はないが…。俺の名前も知ってるんだな。俺も有名な商人になったもんだな。じゃあ嬢ちゃん、お前さんは何ができる?何の能力を持っている?」
(やっぱり契約は能力ありなのか…。私は始めウカと言葉も通じなかったし、ヒルナがいなかったらいまごろ空の藻屑だったわね…)
「え…えぇ?能力…能力…能力…」
「もしかして、“無能”か?その羽は偽物だったか。嬢ちゃんは可愛いが“無能”はちょっと難しいなぁ。他を当たってくれないか」
ウカは呆れたように、軽く緑髪の幼女をあしらい、家に入ろうとした。
すると…
「クロノ、魔法使える!未来予知できる!空も飛べる!欲しいだろ、ウカ!」
ウカの足が止まった。
「…嬢ちゃん、それ、本当だろうなぁ…?」
ウカは振り返らずに、そのまま幼女に背を向けたまま問いかけた。
「もちろんだ。二言はないぞ」
幼女はやけに自信満々だ。
「じゃあ、見せてもらってもいいか?」
「お安いご用」
幼女はそう言うと、背中の羽を二度振ったかと思えば風を巻き起こしてその体を浮かせた。
「…飛んでる…!」
羽が生えた人が飛ぶ光景は日本では見ることはなかった。
しかし、いま緑髪の幼女は鳥のように、いや、むしろ鳥よりも優雅に自由自在に空中を浮遊している。
「ほう」
ウカは少し驚いたような嬉しそうな表情を見せて「次は?」と説いた。
幼女はそのまま羽をはためかせながら空中でにやりと笑いながら、左手を胸元に出した。
すると胸元から緑がかった強い光がでてきて、丸く形づくり、魔方陣を出現させたのだ。
そしてその魔方陣はくるくると回り、なんと中から赤い花をいくつも出現させた。
幼女はその花を魔方陣から取り出して、低空飛行でウカに手放した。
音もなく魔方陣が出てきたり、低空飛行になったり、高性能な何かを感じた。
「ウカの奥さんの誕生日が近いから、渡すといい」
「ふん、誕生日なんて事前リサーチすれば一発さ」
「あと10秒後に鐘がなる。そうしたら、おばあさんが頼み事をする」
「まさか…ばぁさんとはもう一年も連絡を取っておらんし、彼処は絶壁の孤島。連絡する術も…」
チリンチリン、チリンチリン
家の中から涼しげな音が響いている。
「どうだ?ビンゴじゃろ?」
「ふん…っまぐれに違いねぇよ」
ウカはクロノから貰った赤い花束をもって家に入った。
鐘というのは、何か電話のようなものなのだろうか。
しばらくすると、ウカはなんとも言えない表情で帰ってきた。
「どうじゃ?」
緑髪の幼女は自信たっぷりにウカに問いかけた。
「驚いたぜ。契約、しようか」
「やったー!」
幼女は嬉しそうに羽をはためかせて、その場を文字通り飛んで喜んだ。
「おねえちゃん、また一緒だね」
本当に嬉しそうに喜ぶ幼女の顔を見上げながら、いきなりの展開を頑張って脳内で理解を進めた。
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