魂の夢想郷(ザナドゥー)
ネリが、絆なる烈火の魂を発動させた。
白を貴重として、宝石のように七色に輝く神殿(輪廻再誕の台)は、一瞬で時を止めたかのように、色を無くした。
灰色や紺色に近い色に包まれた神殿は、どこか妙だった。
「時の子の娘よ」
声をかけられてハッとした。
ネリは何かベールようなものを纏い、更には両手にロンググローブをつけたかのように不思議に輝きを放つ道具を身に付けていた。
「時間がないかしら。端的に言うわ。
“姉君なるもの”の魂を連れてくるのかしら」
「た、魂?!ど、どういうことじゃ?」
「文字通りかしら。
ハリムシャヒャッキに肉体を八つ裂きにされたお前の姉の魂は、冥界へと向かっている。
このままだと、異界人の魂を大好物とするライフスティーラーに喰われてしまうかしら。そうなると、本当の“終わり”かしら。
それまでに、魂を器に戻す。
それが、お前の役目なのかしら。
入り口はあそこ、入れ物はこれ、さあ行ってくるのよ」
どんっと手渡されたのは、鳥籠のようなものだった。
「これは“血が繋がった者”にしか許されぬ宝探しかしら」
「え?待つのじゃ、まだ理解が」
パチンッ
何をされたのか、一瞬では理解できなかった。
「何を躊躇っているのかしら!行きなさい!説明は全部後よ!
説明があるほど恵まれているのに気がつきなさい!
妹であれば、姉を失う悲しみは取り返しがつかないのくらい、すぐ分かりなさいよ!
さぁ、早く!」
「あ…あぁ」
後から右頬に染み出る痛みによって、自分がウリにビンタされたのを理解した。
腫れる頬を抑えながら、クロノは神殿の奥の扉に向かった。
「魂の保管器は一回しか使えない。失敗は許されないかしら」
もうこれ以上ネリの方を振り返っていると、ビンタよりもひどい仕打ちをされそうだったので、振り向かずに進んだ。
「最後にひとつアドバイスかしら。
“魂は、ひとつのところに還る”よ。リベリオラスの唄にあるわよね。
制限時間は24時間。それを過ぎたら、お前も姉もあの世行き。
じゃね」
その言葉は、この世界に古くから伝わる童謡だった。
子供だましの唄。
それでも、少しだけ心細い自分を励ましてくれそうだ。
『クロノさま』
(この声は、マイチーチャル?)
『はい、そうです』
(どうしたのじゃ?)
『この神殿の奥は、魂の夢想郷と呼ばれる特別な世界です。
完全にズィズィミの万幸湯の世界とは、一線を画す場所となっています。
魂の夢想郷は、ネリさまが無理やり門戸をつなげた場所で少々不安定です。
気を付けてくださいね、忠告したかったのです』
(マイチーチャル、かたじけないな。何もかも)
マイチーチャルの優しさが本当に身体中に染みて泣きそうだった。
今すぐ抱きついて、「魂の夢想郷なんかに行きたくない」と駄々をこねたかった。
でも、そうすることで、お姉ちゃんは一生戻ってこない。
今までと違う世界線で、初めてのことばかりで、怯えているのかもしれない。
「…行ってくる!」
クロノはそれしか言えなかった。
出口が見えない神殿の奥の道をひたすらに歩き続けた。
ネリからもらった魂の保管器をぎゅっと抱いて、お姉ちゃんの魂を探しに、旅に出た。
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