いざ、輪廻再誕の台へ
「お前の度胸は、それまでのものか。期待以下なのかしら」
辛辣な言葉が空から降ってきた。
特徴的な言い方。
そして強気な物言い。
高飛車で人を見下すような言葉選び。
そうだ。
アイツか。
今さらなんだというのだ。
今までだって、アイツとは何回も出会って、喧嘩をして来た。
ちょっとクロノより背が高いからって調子に乗って。
そりゃあクロノだって、本当はもっとナイスバディだし、胸だって揉めるくらいにはある。
腰だって色気たっぷりに括れているし、お尻だけでも万人を魅了することができる。
価値なる器では、髪しかもとどおりにはならなかった。
体は、“代償”で小さくなった。
やはり、“代償”を払わなければ、体も戻らない。
でも、代償は、対価を得て始めて意味を成す。
対価は未だ得ていない。
お姉ちゃんを、生かさなければ、意味がないのだ。
「ハッ!恐れをなしたのかしら?
時の神の娘も、この程度では神族の風上にもおけないのかしら。
これなら、お前の父が周りにひた隠しにするわけよ。無能な子供は父にとっても恥だからね」
黙っていればこの小娘は…。
「…五月蝿いのじゃ。生きた年月は、クロノの方が上なのよ?」
クロノはゆっくりと振り向き、この生意気な声の主の方を振り向く。
声の主は、ウリが一瞬で真っ二つにしたハリムシャヒャッキの片方の肉片の上に片膝を立てて偉そうに座っていた。
偉そうなのではないな。
現に偉いのだ。
「中身は年増の婆と言うわけか」
「口の聞き方がなっていないようじゃな。それに、父の悪口は許さぬよ」
逆行で顔が見えなかったが、次第に太陽の角度が変わり、シルエットがハッキリとその顔を写した。
「ふん。減らぬ口かしら」
「どっちがじゃ」
金色の髪に、褐色の肌。
甲冑を身につけたその体はしなやかで華奢である。
ズィズィミの万幸湯の第2令嬢ネリ。
「お前の大切な“姉君”は、しょうがないから直してあげるのかしら」
「…え?」
クロノは耳を疑った。
ネリにそんな力があるなんて、何度転生した世界でも聞いたことがなかった。
「あら?秘技は取っておくものかしら。
ウリ、“姉君だったもの”を早く拾って、神殿の奥にある輪廻生誕の台に連れていくのかしら」
「…う、うん!」
ウリはキョトンとした顔をしながら、力強く頷いた。
「私はネモフィラ師匠のようなへまはしないのかしら。さぁ、やるわよ。運命の力は、1つだけじゃないのかしら。
自分が生まれ変われるなら、他人も生まれ変わらせることができるのかしら」
ハリムシャヒャッキの上で拳を握り、怪しく微笑むネリは、悪魔のようにも女神のように見えた。
何が世界を変えたのか?
何がネリを変えたのか?
その答えは後でもいい。
クロノはお姉ちゃんが助かるただひとつの道に向けて、その小さな手のひらに、“姉君だった肉片”をひとつずつ丁寧に拾い始めた。
集中していたこともあり、この時ネリが呟いた「姉を失うのは、いかなるときもつらいのかしら」という独り言には誰も気がつかなかった。
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