偽りの世界線へ
「お姉ちゃん!!!!」
クロノは叫んだ。
お姉ちゃんのお腹にハリムシャヒャッキの鋭い爪が刺さっていて、傷跡は胸の下から股間の上までぽっかりと穴が空いている。
誰がどう見ても、即死だ。
ハリムシャヒャッキはお姉ちゃんの血がついた爪を乱雑に引き抜いた。
すでにお姉ちゃんは息耐えていて、三等分に分断された肉片が宙を舞った。
グシャッ
クロノの足元に“お姉ちゃんだったもの”が降ってきて、同時に真っ赤な血が靴に盛大にかかった。
もう、何回じゃ?
お姉ちゃんは、何回死んだら許されるのじゃ?
前回は彼奴の思うがままにやられてしまった。
その前は、期限が悪かったネモフィラさまに殺されて、そして運命の力も目覚めずに息耐えた。
その前は、ロキと相容れずに木っ端微塵になった。
その前は、精神分離の魔法がうまく解除できずに、そのまま異世界の塵芥となって、空気中に溶けていった。
その前は、何だったかのう?
そうじゃ。
こちらの世界に来たときに、ヒルナから口づけをして食べ物を体内に入れなかったがために、夕方には消えてしまったのじゃった。
その前は?
もう覚えるのを辞めてしまった。
あぁ、そうじゃな。
“三界の天蓋”にやられたのじゃ。
あやつは理解が早いが、手も早い。
一番年下でからだが小さいのに、頭の回転は随一じゃ。
その前は、三界の宝鐘がある場所までは行けたが、あと少しのところであやつに阻止されたのじゃ。
クロノは、それでも諦めんのじゃ。
また、昔のように、姉妹3人で、糸を紡ぐのだ。
“運命の三女神”で、また運命の糸を紡ぐのだ。
もう、奴の好きにはさせない。
“無情の果実”は、ここにある。
「さぁて、この世界線もダメじゃったな。
わざわざ、お姉ちゃんを違う世界線に飛ばしても、どうしても運命の三女神の強い糸で引き寄せられてしまう。
ニュッカも、結局三界に戻ってきてしまう。クロノががんばっても、運命は変えられぬのかもしれぬ…」
いや。
ひとつだけ、心当たりがある。
父上。
父上ならば、万能の神であれば、お姉ちゃんを犠牲にしなくても済むかもしれぬ。
いやいや。
父上はダメじゃ。
時の神クロノスではなく、クロノの本当の父ー。
目の前でハリムシャヒャッキが吠えている。
からだ全身から鋭利なトゲをうねうねとくねらせて、何万人という魂を奪ったのか?
運命を司る神々は何をやっているのじゃ?
神のはかりごと(フェイトアワーグラス)のやつが仕事を怠慢してるんじゃろ?
まぁ、いい。
さぁて、クロノも死ぬか。
いつものように首の頸動脈を狙って一発で死ぬ。
次のプランを考えるのは、次の世界で生まれ変わったあとでもいい。
プシュッ
首からリボンのように赤い血が飛び出た。
緑の長い三つ編みが、音もなく地面に落ちた。
クロノが、自害した。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
更新の励みになりますので、いいね!やブックマークをどうぞよろしくお願いします!
書籍化を目指して日々更新していますので、明日もまたぜひ読みに来てくださいね\(^o^)/




