真実の味
「ツインレイ…ネリさまの運命の力…」
二人は、お互いに手をぎゅっと握り、体を合わせながら私たちを見た。
「ネリのツインレイのおかげで、ボクたちは、決して離れることなく一緒にいられるのです」
二人はまるで、一心同体のように、鶴のつがいになったかように、さらに体を合わせた。
「いろいろ騒がせてすまなかったかしら。“アーウェルサ”のことも、みんなには知ってほしいのかしら。そのために、今回は体をひとつ犠牲にしたのよ。痛かったんだから」
ネリさまが話しているときに、ポットベリードが気を利かせて、ネリさまに服を渡した。
それまで、裸であられもない姿をしていたネリさまだったので、服を着たのを見て安心した。
まだ成長段階の胸やおしりなど、目のやり場に困る。
ポットベリードが正装ではなく、ゆったりとしたピンク色のローブを着せてくれたので、私は心底安心してしまった。
幼女にときめく趣味はまだない。
それが、異世界に来ても、だ。
「何も知らないお前たちに教えてやるのかしら。“アーウェルサ”のこと、ワタシの“ツインレイ”のこと」
「アーウェルサって…?」
思わず私は食いぎみに尋ねた。
「頭が高いのよ、異世界人。まだ運命の力も使いこなせていないひよっこかしら。
なぜ神がお前に力を与えたのか、そしてお前をこちらの世界に寄越したのか。
せめてアーウェルサの餌にならないようにすることね。足手まといは要らないのかしら」
産まれたばかりでも、ネリさまの毒舌は健在だった。
でも、彼女の言うことも一理ある。
今回はたまたまツインレイでネリさまが生まれ変わったから良かったが、私はことすべてにおいて無力だった。
叫ぶことしかできない。
剣も使えなければ、癒すこともできない。
「それなら、教えてくださいよ。力の使い方を」
「ふん。調子に乗るんじゃないわよ虫けらが。師匠すら守れなかったのに…」
ネリさまは、そこで、はたりと目から涙のようなものをこぼしたように見えた。
「お姉ちゃんを悪く言うのは辞めるのじゃ」
ここで、クロノが反抗した。
「ハッ。聞いて呆れるのかしら。
時の神の娘よ。お前は未来が見えるのよね?じゃあ、今まで起きたことも予想できたのよね?
そう、ネモフィラ師匠が死んだことも。ねぇ?そうよね?見殺しにしたのよね?
助けられたのに…」
ネモフィラさまが、死んだ?
やはり、そうなのか?!
「…」
クロノは何も言わずに、拳を握り、唇をきつく噛んでいた。
「図星かしら?未来が見えるのに、何もしないの?何もしないなら、できないのと同じよ。無力なら無力なりに、後ろに下がっていればいいのに。
しゃしゃりでられると、努力している者の邪魔になるのよ」
「クロノだって…!クロノだって…好きで言ってないわけじゃない!
言えないんだもん!言ったら…言ったら…全部だめになるんじゃ!」
ダッ
クロノは走り出したかと思えば、魔方陣を瞬間的に繰り出して、移動魔法で何処かに消えてしまった。
「ふん。弱虫が。世界を変えるには、あやつは不要なのかしら。
そう言われたのでしょう?イズミタチバナよ」
ギロリと蛇のように睨む視線が私に突き刺さる。
「ネモフィラ師匠は、お前に暗示していたはずだ。
“クロノを見ておけ”とね。なぜ言いつけを破った?守らなかった結果がこれよ?」
「そ…それは…」
「ミー、それは本当なのか?」
ヒルナが不安そうに言った。
「…う、うん」
誰にも言えなかった。
ロキにも、ヒルナにも、もちろん当人であるクロノにも。
ヤァヤァに相談しようとした。
でも、何かの間違いだと思った。
クロノはまだ小さくて幼いから、“よく見ておいてね”という意味だと解釈していた。
あのとき。
ネモフィラさまに不意に抱きついてしまったとき、耳元で囁いてくれていたのだ。
『クロノに気を配りなさい。クロノを見ておくこと。それが世界を救う鍵になる』
そう言ったのだ。
「イズミタチバナよ。あの緑髪の小娘が、時の神の娘という根拠はどこにある?父にあったのか?小娘の戯言かもしれんぞ」
「そ、それは…」
「もう一度いっておく。クロノは何かを隠していかしら。そして、あやつはもしかするとアーウェルサの手下かもしれぬ。
その結果、ネモフィラ師匠が亡くなって、ワタシの命が狙われた。
さぁ、どう説明するのかしら?」
冷たい氷の針が何万本も刺さるような気持ちだった。
「クロノ…」
私は冷えきった内緒の楽園の中で、ただ立ち尽くすしかなかった。
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