ツインレイ
ウリがネリを出産してから、数分経過した。
エチノダーンはタオルと温かいお湯を持ってきて、ウリの体を拭いたり、汗をぬぐってあげたりした。
「ネリ…」
ウリの顔は、今まさに出産という大きな命の駆け引きを終えて、幸せを感じた母親の穏やかな顔をしていた。
しかし、ウリが産んだものは、ネリという人間でなく、まるでカエルの卵のような液状で弾力がある異質なものだった。
「ウリさま、お疲れさまでございます。水分補給をと思い、栄養がある“栄養水”をお持ちしました」
ネリの付き人である巨大なタツノオトシゴのような執事は、あくまでも冷静に対応をした。
ウリに貝殻入りの飲み物を口許に差し出した。
「ありがとう、ポットベリード。ネリは間もなく、孵化します。もう少し待ってくださいね」
「かしこまりました」
そういうと、ポットベリードは後ろに下がり、気配を消した。
あくまでも、ネリさまの付き人ということなのだろうか。
「ウリ…大丈夫だった?何か欲しいものはある?」
「あ…イズミさま。ご心配お掛けしてしまいすみません。では、お言葉に甘えて、私の“穴”を拭いてもらえますか?
放置してしまうと被れてしまったり、跡が残ってしまうので…」
「う、うん!もちろんだよ!」
そうは言ったものの、末恐ろしくて、クロノやヒルナにお願いしたかった。
タオルの下に隠されたウリの穴(へその穴)の、状態を想像するだけで、ぞっとする。
それでも進むしかない。
恐る恐るタオルを捲ると、そこにはぷっくりとへこんだ穴があった。
あんなに大きく広がっていた穴だったが、今は鶏の卵が入るくらいの大きさになっていて、そこまでのエグさや残酷さは無かった。
穴の周りには、ウリの体液が広がっていた。
なんだろう。
例えると、耳の穴ような。
そこに、粘度が高い乳白色の液体が付着しているくらいだ。
私は少し安心しながら、ぬるま湯で濡らしたタオルで優しく穴の周りを拭いた。
「あっ!」
突然ウリが叫んだ。
「ネリが、呼んでる。今、ネリが孵化します」
そう言うと、すぐに床の上でびろんと伸びていた乳白色の卵の固まりが宙に浮いた。
「ネリ…良かった。あなたの願いの強さが奇跡を起こしたのね」
シュッ!パッ!
バランスボールくらいはある大きな液体が宙に浮いたかと思えば、中が割れて、数千もの卵が出てきた。
卵の中から卵が出てきて、混乱したが、それこそカエルの卵のようなものなので、そうだと思えば理解に容易い。
その数千の小さな卵たちは、部屋をぐるりと一周飛んで、再びウリのそばに戻ってきた。
シュウウウッ
今度はそれぞれの卵がひしめき合って、何やら塊となっていった。
その塊はいつしか形を成していき、気がつけば、人の形をしているようにも見える。
「まさか…」
なんと。
にわかには信じがたいが、カエルの卵のような無数の個体がひとつに固まり、人の形を成している。
それも、ネリの形に。
服は着ていないので、まさに産まれたままの姿だ。
女の子の、もっと幼くて、成長の過程を感じる胸の膨らみやふくよかな腰回り、軽やかなおしりが見える。
何かのCGを見ているかのようだった。
爪ができて、鼻の穴ができて、へそが窪み、乳首がぷっくりと膨れて、睫毛が伸びて、おしりの窪みが深くなる。
さっきまで、どろどろの乳白色だった球体が、ものの数分で女児に生まれ変わった。
「…ふぅ…っ」
球体の動きが止まり、そしてネリさまと呼ばれたその体が息を吐く。
まるで、生まれたばかりの赤子が産声をあげるかのように。
それは、とても静かな産声だったけれども。
一連の動きが止まり、宙に浮いていたネリさまが、音もなくゆっくりと爪先から床に着地する。
「ネリ!会いたかった!」
ウリはまだ疲れが残っているであろう体を無理矢理起こして、ネリさまの体に抱きついた。
「ウリ…ありがとう…かしら」
まだ意識がはっきりとしていない様子だ。
どこか焦点も定まっていない。
「みなさん、お騒がせしました。これがネリの神なる力。運命の力。“ツインレイ”です」
ウリとネリはきつく抱き合い、皆に向かって言った。
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