妹の補食
ローブの人物がいなくなったこのミテラ(秘密の楽園)には、ひんやりとした静けさと生臭い血の臭いが残されただけだった。
頭が追い付いていない。
ローブの人物は、ネモフィラさまは果てたと言った?
私は何かを忘れてしまっているのか?
忘れるものなんて、異世界にないはずなのに。
クロノとローブの人物は何か繋がっているところがある?
何やら顔見知りのような雰囲気を感じてしまった。
ヒルナに対しても、何やら意味深なことを言っていた。
どういうことなのだ?
疑問しか湧かない頭の中をフル回転させて、まずはウリの元に駆け寄った。
「ウリ…!大丈夫?」
ネリさまの出欠の量は相当で、本当に海のように広がっていて、血を避けてウリのそばに行くのは容易ではなかった。
「はい…ボクは大丈夫ですよ」
ウリは視線を上げて、私に微笑んだ。
「大丈夫なんて…そんな…」
嘘をつくほど、辛いものはない。
大丈夫なはずはない。
「ウリ…まずは、ネリさまをこちらに」
「いえ、大丈夫なんです。ネリは死んでいないですから。もう少し待ってください」
ネリさまが死んでいないなんて、そんな空想を抱くほどに、ウリの心には深く傷がついたのだ。
なんとかしたい。
「今から、ネリは復活するので、少し待っていてください」
ウリは何を言っている?
そのとき。
ウリは床に広がる血溜まりに体を飛び込ませた。
無論、ウリの体は前身真っ赤に染まった。
「ちょっ…ウリ!何をして!」
寝転がったウリは、なんと胸に抱いたネリを食べ始めた。
「え?!」
ウリは目をつむったまま、無心でネリを食べる。
しかし、想像しているような食べ方というか、食べられ方ではなく、何だか霞を食べるように、上品に食べられていくネリさまを見つめていた。
頭から噛みつき、そしてネリさまの断片を口に運び、咀嚼し、飲み込む。
血が出きってしまったのか、ネリさまの体からは一滴の血もなく、ただ肉を食らう食事の風景に見えた。
残酷さや気持ち悪さは全くなく、目の前に流れるシーンを映画のように見るだけだった。
しかも、ネリさまの体は柔らかいのか、人間の肉のような弾力ではなく、どちらかと言えば、魚の身のようにホロホロと簡単に崩れていった。
その繰り返しを5分ほどして、服以外は全てきれいさっぱり食べ切った。
「ふぅ」
満腹、とでも言うかのような満足げな顔をして、体を起こした。
いつの間にか、床に大きく広がっていた血溜まりは、どこかに行ってしまったのか、無くなってしまった。
蒸発でもしたのだろうか?
「ウリ…その…ネリさまを…食べたの…?」
「はい、そうなのですよ。ボクはネリを食べました。もう少しなのです」
「もう少しって…これ、何が起きてるの?」
「…うぅっ!」
急にウリが口許を手で押さえた。
人を食べておいて、無事なわけがない。
「大丈夫?!」
ウリの口からは、唾液がつーっと垂れる。
「…始まりました」
短く、そして低く言った。
「ボクは、ネリを補食しました。そして、これから、ネリを出産します」
私はますます、頭が混乱して分からなくなった。
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