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内緒の楽園、血溜まりの海


「ねぇウリ、本当にネリさまのところに行っても大丈夫?タイミングって今じゃないかなぁと」


アナパウロの穴(酒場)のもっと奥にある秘密の部屋に向かっていた。


中央の城に戻るには、オタマヒコでもやや時間がかかる。


そのため、討伐凱旋祭りの後で仕事をするときは、その秘密の部屋に行くらしい。


ウリとネリさまは、その部屋を“ミテラ”と呼んだ。


なんでも、前の世界にいたときの母の名前らしい。


「この世界、いや前の世界はもう戦争で崩壊しているはずです。なので、ボクたちだけが唯一母のこと知っているし、覚えている。そんな意味も込めて、誰にも知られなくても良い、でもボクたちだけは覚えていたいという気持ちなのです。


ミテラの中にいると、母に抱っこされているような気分になるのです」


きっと双子の母親は、二人に似てとても美人で頭がよくて行動力がある人物なのだろう。


「お母さんもいれば、お父さんいるのか?」


ヒルナが聞いた。


「はい、“パテール”もありますよ。でもそこだけは、二人だけの秘密なのです。エチノダーンも、ポットベリードも誰も知らないんですよ。その秘密がなんだかボクたちには嬉しいのです」


パテール。


行くことはないだろうが、いつか話だけでも聞いてみたいな。


二人だけの秘密の部屋。


内緒の楽園。


「着きましたよ、ここがミテラです」


そう言われたのは、ただの壁だった。


アナパウロの穴自体が、巻き貝のようにとぐろを巻いている形状なので、施設的に構造が崩壊しているような内部になっている。


海のような血液のような謎の液体で満たされていることもあり、重力を完全に無視した世界なのだ。


「ふむ。隠し部屋とはさすがじゃな。移動魔法と同等の高度魔法じゃ」


クロノが嬉しそうに答えた。


クロノくらいになるとどうやら隠し部屋の扉が見えるらしい。


「さて、ネリにサプライズですよ!みなさん、準備はいいですか?」


パンッ


手のひらを叩いたような軽い音がすると、壁の中からなんと穴がじんわりと現れた。


「これは分からないなぁ」


異世界の魔法には、感心させられっぱなしである。


「じゃあ、サプライズ感を出すために、みなさんには隠蔽魔法ハイディングムーンをかけますね。


ボクが合図するまで、みなさんの存在感は全く無くなります!ネリの驚く顔は、とってもレアですからね!」


ウリはそう言って、短く呪文を唱えて、手のひらからキラキラと輝く白い砂を出した。


その砂を全員にかかるように、ふわっと撒き散らした。


「ボクは魔法が得意ではないのです。全部ネリからの譲り受けです。この隠蔽魔法ハイディングムーンも、ミテラに入るため、他の治癒者に見つからないように教わったものなのですよ」


魔法をかけられ、よくみると体や指先がほんのりと縁取られるように輝いているように見えた。


「いきますよー!」


ウリは、勢いよく穴に入っていった。


ズィズィミは穴好きだな、とふと感じた。


その瞬間、ミテラに続くこの穴がダイナミックなウォータースライダーだったことを、穴に入ってから気づくのだった。


「!?!」


あまりの恐怖に声も出ずに、ミテラにたどり着いた。









ミテラの底はふわふわとした布団ようだった。


暗すぎてよく見えないが、暗闇に目が慣れると、色とりどりのクッションが積み重なった場所に着地したようだった。


「みなさん、無事ですよね」


さっきまでウォータースライダーだったのに、次の瞬間にクッションの海なる理由と原理は、“異世界だから”で、話がつきそうだ。


今は、サプライズで驚いてくれるのか、喜んでくれるのか、起こられるのか、期限が悪くなるのか分からない悪役令嬢の第2公女のネリさまに会いに行くしかない。


クッションの脇にはぬいぐるみがあったりと、年相応の遊びもしていることが分かり、なんだかほっとした。


ミテラは、彼女たちの童心なのかもしれない。


私たちは、ウリのあとに続き、薄暗い部屋を出て、光が指す方に向かった。







暗闇に目が慣れてしまったので、眩しい部屋の光はとても刺激的でまともに目を開けられなかった。


それもあってか、ウリは部屋の前で立ち止まった。


「…?」


しかし、この立ちすくみ方に違和感を感じた。


「…ウリ?」


私はウリの肩越しに、光の奥を見た。


眩しすぎて真っ白だった世界の中に、少しずつ輪郭が浮かび上がる。


その輪郭はくっきりと何かを縁取っていた。


ひとつは、小さくか弱い輪郭。


もうひとつは、やや大きく鋭い輪郭。


「…?!」


眩しさに目が慣れて、絶句した。


ミテラには、血の海が広がっていた。


かわいい人形やぬいぐるみ、女の子らしい雑貨に飛び散る鮮血の赤。


そこに浮かんでいるのは、紛れもなくネリさまで、流れ出る血の量から推測すると、紛れもなく死んでいる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

更新の励みになりますので、いいね!やブックマークをどうぞよろしくお願いします!

書籍化を目指して日々更新していますので、明日もまたぜひ読みに来てくださいね\(^o^)/

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