アナパウラの穴ー討伐凱旋祭りの始まり
「ふぅ~。やっぱり、力を使うと、一気に疲労が来ますね~。今にも気を失いそうです」
戦うメイド戦士ウリ(男の娘)は、ハリムシャヒャッキの真っ赤な地を全身に浴びて、帰ってきた。
返り血を頭から被っていること以外は、何一つ変わらず、癒しの笑顔を振り撒いてくれる。
「はい!これタオルー!」
踊ってしゃべれるヒトデ型生物であるエチノダーンが、ぴょんっと飛んできて、ウリにタオルを手渡した。
「ありがとうございます。ちょっと私は、シャワーを浴びて来ますね。耳の穴まで、ハリムシャの体液でべとべとなんです」
言っていることは想像を越えることだが、ウリの表情がいつも通り過ぎて、違和感がない。
しかし、彼女はいま、自分の体よりも何百倍も大きくて獰猛な敵と戦ってきたのだ。
その事実は、私だけではなく、ヒルナもクロノも見てきた。
「凄まじい戦闘力だったな。あれが“運命の力”か。ヴァニッシングツインという力は、どうも敵に回したくないものだな」
ヒルナは少し怯えながら言った。
「うむ。わしも長く生きてきたが、これほどの強さはなかなか見たことがない。
これは、ドラゴンもケロベロスも、牛鬼も千年狼も一瞬で倒せそうじゃな。
こんな温泉処で生きるよりも、猛獣ハンターか何かになった方が良さそうに思えるな」
これには、ヒルナと仲が悪いクロノも迷わず同意した。
「ウリさまの強さはズィズィミではピカイチで、右に出るものはいないって言われてるよー!
第2令嬢のネリさまでも、戦闘能力では敵わないって公言してるくらいだしねー!」
エチノダーンは、えっへんと鼻の穴を膨らませて自慢げに言った。
「あんなに小さい体なのに、どこにあの強さが…」
未だにウリの戦闘の衝撃が身体中に走っていた。
ビリビリと体の末端を痺れさせるような、そんな強さだった。
本当に一瞬だった。
瞬きをした瞬間に、獣との決着がついたのだ。
それも、目に見えないくらい速く。
私のからだの半分くらいしかないのに、運命の力があるだけで、これほどまでに違うのか。
私の“過ぎ来し時の鏡”も、もしかしたら、相当の潜在能力を秘めているのではないかー?
ネモフィラさまには、バタバタしていたこともあり、聞くことができなかったので、あとでウリに“運命の力”のことを詳しく聞こう。
「ウリさまの準備が整うまで、“アナパウラの穴”でゆっくりしていようー!
ズィズィミの名産品である“湯欲の珠子”(パルスマインド)があるから、ぜひ食べて欲しいんだなー!
あとはね、オタマヒコから搾り取ったお乳で作った特別な飲み物もあるの!
こっちこっち!」
エチノダーンは、案内係の役割を大いに全うしながら、私たちを案内してくれた。
そして、ウリから説明も受けていた、大遊技場の“アナパウラの穴”へみんなで向かった。
「…すごー!」
アナパウラの穴は、大遊技場の名に相応しく、壮大で豪華絢爛な装いだった。
外側は、とぐろを巻いた貝殻で、内側もその見た目を活かした内装となっていた。
螺旋階段上に机やテーブルが並べられ、至るところで治癒者がお酒のような大きなジョッキグラスを交わしあい、見たこともない料理を食べ、団欒に花を咲かせている。
「ウリさまー!ウリさまー!」
どこかでウリの名前を叫ぶ声がした。
「今回も始まったのねー!」
エチノダーンは、クロノの頭にちょこんと乗っていた。
フォイを浴びて、クロノのショートカットは背中を越えるロングヘアになり、三つ編みの髪を揺らしていた。
「何が始まるのだ?」
ヒルナがキョロキョロしながら聞いた。
「ハリムシャヒャッキは、ズィズィミに災いをもたらす悪とされているんだなー!
そのハリムシャを倒したってことは、すごいいいことなんだな!それもあって、ハリムシャを無事倒せたときは、ズィズィミの安定とウリさまの討伐への感謝と労いを込めて、お祭りをこのアナパウラで開くのが恒例なのだ!
この討伐凱旋祭りが好きで、ズィズィミに長期滞在する治癒者も多いんだなー!」
エチノダーンが言い終わるやいなや、空高くそびえる天井から花びらが何枚も何枚も落ちてきた。
「お!これはネリさまの魔法だねー!」
この花吹雪は確か、ネモフィラさまも出していたものだ。
ネリさまはネモフィラさまに弟子入りをしていたと言っていたので、伝授してもらったのかもしれない。
「さぁ、ワタシたちも討伐凱旋祭りを楽しもーう!」
盛り上がる大遊技場であるアナパウラは、ますます活気を高めて、討伐凱旋祭りが始まった。
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