ヒルナの魔法
ラヤハサニイコが午前中に思っていたよりも早く売れたので、午後はフリータイムとなった。
あとからウカから聞かされたのだが、私の衣装は常連さんの受けもよくて、またやってほしいとリクエストがあったそうだ。
そのあとヒルナから補足があったのだが、奴隷を持っているところは、大小こそあれ、やはりどこかかしらで競争心があるらしい。
容姿も良くてよく働く奴隷は、やはり花形奴隷で、どんどんと外に出していって、自慢の種にするそうだ。
一方見た目が劣ったり、仕事ができないような奴隷は安く取引されたりと、大分前よりはましになったといえども、奴隷の世界でもまだまだヒエラルキーは存在するのだとか。
無論、ヒルナのような美しくて気遣いもできるような奴隷は、誰もが喉から手が出るほど欲しい。
奴隷を持つ者同士での争いも絶えないのが現実だ。
どこにいっても、こうした人を妬むことはある。
異世界でも、そうでなくても、嫉妬心というものは神様が作った避けられないギフトなのだ。
そんなことを考えながら、私とヒルナは町外れの森に向かって歩いていた。
アニメや漫画で見るような異色の動物たちが草原を走り回ったり、鳥が飛ぶくらい普通な景色としてスライムが道を横切る。
ここはやはり、私が元いた世界とは全く異なるのだ。
「さて、この辺にしようか」
ヒルナは木々が立ち並ぶ草原に立ち、白いマントを靡かせながら、短く呪文を唱えると、目の前に白と黄色の丸い光の玉を手のひらに出した。
生まれて初めて見る魔法。
本当にあったんだ。
階段下に追いやられた少年が立派や魔法使いになるような作品でしか魔法を知らなかったが、ヒルナは息を吸うように魔法の玉をいくつも出した。
「エルフは森の番人とも言われる。基本的には光属性の魔法を得意とする。でも私は結構長生きしているから、色んなものを使えるんだ」
「へぇ~そうなんだ。ちなみにいくつくらい?」
ヒルナは少し黙った。
そこまで長い年月生きているのだろうか。
「エルフは不死であることが多いから、もう年齢なんて数えるのを辞めた」
ヒルナはどこか空の遠いところを見ながら言った。
もしかすると、不死であることは一見良さそうに見えるが、辛いこともあるかもしれない。
聞いてはいけないことを聞いてしまった気がしたので、急いで話を魔法に戻した。
「私も、魔法使えるかなぁ」
「ん~ミーの才能にもよると思うけれども、割りと血筋で決まることが多いからなぁ。でも異国の者でも魔法を使える者も見たことがある。薬草系の魔法ならいけるかもしれない。あとは練習かな」
「今度時間あるとき教えてもらってもいい?」
「もちろん。ウカもミーが魔法を使えるとなると鼻が高いよ」
「ありがとう!」
折角異世界に来たのだし、色々経験をしていくのも悪くはない。
それに、いつ元の世界に戻れるのかも分からないし、そんな中でできることをやっていくのは悪いことではないはずだ。
ヒルナはニコリと笑って、そしていくつもの光の玉を空に向かって送り出した。
「今のは何をしたの?」
「あぁ、これは」
両手をあわせて、ゆっくりと開くと、柔らかく縁取られた丸い玉を作った。
「おまじないというか、願い事みたいなもの。言葉では言いにくいけれども、儀式だな」
光に顔を照らされながら優しく微笑むヒルナだけれども、何処か寂しそうに見えた。
「さぁ、そろそろ行こう。ウカが心配する」
「うん」
今思えば、このときもっとヒルナの話を聞いてあげていればよかったなと思う。
そうしたら、もしかしたら未来は少し変わったかもしれない。
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