戦闘メイド ウリ
クロノの移動魔法のお陰で、“ハリムシャヒャッキ”が現れたとされる場所まで秒速で移動することが叶った。
クロノとウリが二人とも共鳴することで、正確な場所の特定や地理の把握は、あっという間に完了した。
ヒルナも戦闘に備えて、いくつかの精霊を召喚し、治癒に当たらせたり、準備をした。
「ねぇ、ウリ、“ハリムシャヒャッキ”ってどんな怪物なの?」
移動までに少し時間があったので、ちょっとだけ聞いてみることにした。
「“ハリムシャヒャッキ”は、略してハリムシャと呼んでいます。ちょっと厄介な子で、とても強い猛毒性を持っているんです。
それによく五感が利くのですよ。目も鼻も口も耳も野生の感も。
それに、何もしなくても攻撃してくるのです。このズィズィミはもう何百年と続くひとつの星のようなものなので、それこそここにしかいない動物たちも自生しています。
ハリムシャもその一つですが、危険度は桁違いです。
きっと、歴史を遡ると、ヒトが病気で亡くなるよりも多くの命を奪ったのは間違いないでしょうね」
ウリは、ふわふわの泡のようなスカートや胸しか隠れない細いチューブトップ(もはや、たすき)の上から、重装備をし始めた。
あらゆる箇所に甲冑を装着し、なるべく肌面積を減らしたが、トレードマークのメイドカチューシャは、外さないらしい。
メイドカチューシャを生かした鎧を頭にも被せていた。
ウリの短いオレンジ色の髪が、兜の下から少しだけ顔を覗かせていた。
「そんな怪獣とどうやって戦うのじゃ?」
移動魔法用の扉(ゴシック様式のどこでもドア)を召喚したクロノが、不安そうにやってきた。
「あ、クロノさん!髪かなり伸びましたね!やはりフォイの影響ですかね?」
よく見ると確かに伸びている。
ボブくらいの長さだったのが、なんと床に着くくらいに緑の髪が豊かになびいている。
「クロノすごい!どうしたの?」
「フォイは、治癒の力の凝縮です。クロノさんは、恐らくですが昔髪が長かったんですよね?皮膚の傷を直すように、髪も治ったんですかね」
「…うむ。お姉ちゃんは、この髪を見ても何とも思わぬか?」
クロノが、少し寂しそうに言うように見えた。
「綺麗な髪だね。みつあみにしてみる?結ってあげるよ」
緑に輝く宝石のような美しい髪だった。
「…お願いしようかのう」
嬉し泣きなのか、クロノの目頭から涙が一筋流れた気がした。
みつあみを結いながら、先程のクロノの質問の回答をウリから待った。
「ハリムシャは、先程お伝えした通り、五感を駆使して警戒をしています。見つかったら最後。見つかる前にやるか、やられる前にやるか、です。
それが、できるのが私の運命の力、ヴァニッシングツインです。
説明は、戦ったあとにしましょう。今は治癒者ひとりも被害を出さないのが先決です」
「ウリ、無理はダメなのかしら」
書斎机から短い声がした。
「えぇ、もちろんですよ、ネリ」
ウリの返答を聞くと、満足げに隣の部屋に姿を消した。
危険な戦いなのに、心配していないのか?
やっぱり冷酷な令嬢なのかもしれない。
「クロノさん、ヒルナさん、イズミさんは危ないのでこの部屋から見ていてください。
ではいってきますね!」
まるでちょっとお買い物にでも行くかと思うくらいの軽やかな雰囲気とステップで、扉の奥に笑顔で向かっていった。
ウリの能力、ヴァニッシングツインとはどう言った能力なのだろうか?
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