インターナルツイン
「生まれ変わる間、不思議と魂としての意識ははっきりありました。
それもあって、ボクは強く強くネリに会いたい、生まれ変わってもネリと生きたい、ネリのそばにいたいと願い続けました。
父や母にも会いたかったですが、父と母には二人の時間を過ごしてほしかったのです。戦争がない時代で、二人の愛を育んでもらいたい…その一心でした。
そして生まれ変わったとき、ボクとネリはこの世界に産声をあげたのです」
「ということは、ウリのこの世界でのお父さんとお母さんは、前の世界のお父さんとお母さんではないのね」
ウリはどこかスッキリした顔で、価値の器を見ているようだった。
「はい、そうです。ボクたちのお父さんとお母さんは、全く知らない魂の持ち主です。でも、とても良い人たちでしたよ」
「…ということは…」
「あ!勘違いしないでくださいね!二人はまだ元気ですよ!
やっぱり転生で生まれ変わったものは、“運命の力”を持つ者として、特別扱いになるのです。世界をよくするための力なら、生まれたところに留まって死を迎えることはないというのが、一般的な考えです。
それもあって、ボクたちは旅をして、自分達の目的を見つけて、果たすためにここにたどり着いたのです」
二人の両親が健在で、少しほっとした。
「たまに手紙を書いたり、珍しい食べ物を送ったりするんですよ」と、天使の笑顔を見せながら答えてくれた。
「このズィズィミの万幸湯は、どうやってできたの?」
これは、ずっと私が気になっていたことだ。
あんなカバのお尻の穴の中に、どうやってこの巨大な温泉を移動させたのか?
元を辿れば、こんな“生きる源泉”をどうやって見つけたのか?
異世界は不思議なことはあるが、この点については、エチノダーンも解説はしてくれなかった。
「あぁ、それですね」
そのとき、チリンチリンと鈴の音が洞窟内に鳴り響いた。
「何?この音?」
「あぁ、これはですね」
と言って、何気なくウリはふわふわの泡のようなスカートをたくしあげ、まだ成長段階の男の娘の華奢な太ももを見せてくれた。
そこには、小さなカウベルような鈴がひとつ着いていた。
「これは、連絡鈴というもので、離れた人に連絡をすることができる優れものなのです。このズィズィミを開拓しているときに見つけたんですがね、とても便利なんですよ」
ポケベルみたいなものか?
それにしても、なぜ太ももにつけなければいけないのか。
それについても、あとで聞いてみよう。
「なになに、あ、ネリが呼んでいます。それに、ヒルナさんもクロノさんも、価値の器からもう出られたみたいです。たっぷりフォイを浴びて、元気になれたみたいです。
お話はまたあとでも良いですか?一緒によるご飯でも食べながら、お話ししたいです!枕を投げ合ったり、夜更かししたり…」
ちょっと恥ずかしそうに、頬を赤らめるウリは、やっぱり可愛い女の子にしか見えなくて、大事なあそこにあんなものがついているなんて、と想像してしまうのだった。
私たちは、精神分離の魔法を治癒する専用の価値の器から、移動をすることにした。
「ウリ、奴が来たのかしら。急ぐのかしら」
ネリさまがいる書斎に入るや否や、すぐに声が飛んできた。
書斎机に頬杖をつけながら気だるそうに言った。
見た目は小学生にしか見えないのに、彼女の内側から醸し出される雰囲気は百戦錬磨の戦士のような強さがある。
「“ハリムシャヒャッキ”が出たのかしら。場所はこここから東、オタマヒコで急いで20分くらいのところよ。ちょっといつもよりも近いから、急ぐかしら」
「まだ被害者は出ていないよね?もし近くに治癒者がいたら、避難させないと」
「それはもうポットベリードが手配済かしら。なんでも今日のは大きめらしいのよ。
ウリ、またお願いして良いかしら?」
金色のツインテールが揺れる。
雰囲気的に、あまり良くなさそうなものが出現したらしい。
「もちろんよ。それは、ボクの役目だからね」
ウリは、自信満々に胸を張った。
「何事じゃ?」
「ミー、待たせたな」
勢いよくドアを開けて、ヒルナとクロノもやってきた。
クロノの頭の上には、エチノダーンがちゃっかり乗っていた。
「なんでもよく分からないけど、何か悪いものが出たらしいの。それをいまから退治しに行くんだって」
「それなら、私も力も貸そう」
「うぬも加勢するのじゃ」
「みなさん、ありがとうございます!」
ウリはペコペコと何度もお辞儀をした。
「まぁ、それには及ばないのかしら」
ネリさまは、ふんっと鼻をならしながら、軽くあしらった。
「イズミさん、前、私の“運命の力”のお話を保留にしていましたよね。ちょうどいいタイミングなので、お見せしますね」
「ウリの、運命の力…!」
「はいっ。見ててください!ボクの“ヴァニッシングツイン”を」
そう言ったウリは、太陽のようにキラキラと笑い、自信満々に両手を広げた。
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