ネリノ能力:ツインレイ
「ねぇ、ウリ、その前にひとつ聞いても良いかな?」
「はい、なんでしょう?」
「私が“過ぎ来し方の鏡”、つまりジャッジメントアイズっていう能力なのは分かったんだけど、あまりその能力があるって、自分自身で分からないんだよね。
確かに、ネモフィラさまのときには、ネモフィラさまの過去がぐわーって体の中に入ってきた“感覚”はあるんだけど」
忘れもしない。
頭が割れるくらいに痛かったんだ。
ネモフィラさまの過去(卑弥呼と八枝子)が、一気に体の中に入る感覚は、言葉では言いがたいほどきつかった。
「あぁ、それですね」とウリは納得したように、一回空を仰いで解説してくれた。
「能力というのは、筋肉と同じだ思ってください。使い始めや習得したときは、自由自在にはできないものです。運動なんかがそうですよね。
しかし、能力の発動回数を重ねていったり、鍛練を積んだり、発動条件を満たしていけば、できると思いますよ」
にこりと微笑みながら言われたが、今の話だけだと、一生能力を使う機会は来なそうだ。
「私の時は、ネモフィラさまに殺されかけたんだ。多分、一回死んだんだと思うの。それが、発動条件なのかな?
…ってことは、私は毎回死なないといけないってこと?!」
そう考えると、全くメリットを感じない能力だ。
相手の過去が見えたとしても、死というものが付いて回るのは面倒だ。
もう二度と死にたくない。
あんなに苦しくて痛いのは金輪際勘弁だ。
「あはは。イズミさまは面白いですね。きっと他に発動条件がありますよ。
ネリはネモフィラさまと訓練と修行を続けて、好きなときに“運命の力”である能力を出せるようになりましたよ」
あんなに小さな女の子でも、神の所業の力が使えるのか。
「ちなみに、どんな力なの?」
「ネリの能力は、“ツインレイ”と本人が言っていました」
「“ツインレイ”?」
「はい。ちょっと説明するのは難しいんですが、簡単に言うと“愛”ですかね」
ふふふ、とウリは答えをはぐらかした。
「正確には、ネリの能力なので、ネリからみなさんにご紹介してほしいんです。私はヒルナさんもクロノさんもイズミさんも大好きです。
なので、ネリと仲良くなる話のきっかけとして、取っておいてほしいのです」
聖母のように両手を合わせてお願いする姿は、本当に心から癒される。
キラキラとしたオーラがウリ全体から醸し出されている。
一家にひとり、ウリがいたら、ありとあらゆるいざこざがなくなるのではないだろうか。
「ウリの能力もあとで聞かせてもらえるかな?」
「あ…はい!もちろんですよ。ボクのは…大したことないですがね。
そうですね、まずは、ボクたち双子と両親の話から聞いてくださいね」
ウリはニコニコした顔で旅の思いででも語るかのように、話し始めた。
ボクとネリは、この世界ではなく、全く違う異世界からやって来ました。
それは、やはり、“死”という条件のもとで、こちらに来ました。
それまでボクたちは、この世界よりも遥かに文明が発展したところで生まれて生きていました。
魔法や魔術、超能力や超常現象と言われるようなものは、すべて科学で説明をつけられるようになっていました。
また、治せない病気もなく、細菌やウイルス・毒などの異物はすべて一瞬で病院で治療してもらえるほどに、医療も発展していました。
人々の死因は、“長く生きるのに飽きた”や“もうこれ以上生きても娯楽がない”、“死を体感してみたい”などで、ある意味で死というものがエンターテイメントにもなりつつありました。
それでも人々は空飛ぶ車で働きに出て、ロボットが作ってくれたご飯を食べて、トイレに行く感覚でドアを開けると違う場所に旅行ができる、そんな便利な時代を謳歌していました。
しかし、平凡な日々というものは、平凡でない日々があるからこそ成り立つ言葉だというのを実感することになるのです。
「戦争です。人々は戦争に狂うようになりました」
ウリの言葉は、とても冷たく重々しく、皮膚にビリビリと刺さるものだった。
「それまで惰性のように生きていた人々です。戦争なんて初めての体験です。それはもう、さぞ楽しかったのでしょうね、“ヒトの命を奪う”というゲームが」
「…」
「もちろん、国法で他人の命を奪うことは極刑として定められていました。でも、ヒトは一度味わった甘い蜜の甘さを忘れることができると思いますか?
さらに、自分は今まで我慢してきたのに、他のやつらだけが蜜を吸うのを口を加えてみてられるか?です。
ボクとネリは、その戦争に巻き込まれて死にました。両親も、です。
そうですね、忘れもしません。第187次宇宙世界大戦です。厳密には、父は第94次宇宙世界大戦で亡くなりました」
ウリは、淡々と昔話を話し続けた。
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