胸騒ぎ
城に戻って、ウリに案内されるがままに、精神分離の魔法用の“価値の器”に向かった。
城内は慌ただしく働く執事や飯使い、メイドたちで活気溢れるものとなっていた。
忙しさのなかにも、楽しそうに働く彼らの表情に、私はネリさまの統治がうまくいっていることを察した。
価値の器までは、他愛もない話をして時間を過ごした。
ネリさまの好きな食べ物は甘い木の実で(実はマンダラの実はかなりの絶品らしい!)、苦手なのは高いところ(立場的なところではなく、物理的に高いところ)らしい。
他には、一番人気の価値の器は、大樹の汗と呼ばれる大きな木の虚に溜まった熱々のフォイをかけ流すところらしい。
大樹の汗は、万病に効き、疲労回復や滋養強壮、食欲増進など様々な効果をもたらすという。
令嬢と言っても、休みの日はしっかりとあり、公務がない日はネリさまとウリは、ズィズィミの万幸湯から外出(トゥラーのおしりの穴を通って!)をすることもあるのだとか。
そのときは、代わりにエチノダーンやポットベリートに公務をお願いするのだとか。
なんともクリーンなズィズィミ国の働く事情だ。
私の時もそうして欲しかった。
「着きましたよ、こちらです。
おしゃべりをしていると、あっという間についちゃいますね」
通された場所は城の奥深くにあり、誰も訪れないような人気のない場所だった。
厳重に施錠がされ、限られたひとしか開けることができないようになっている。
分厚い扉の鍵を開けて、中に入ると、重々しく朱色のカーテンが何重にもかけられ、奥に入るのもやっとだった。
幾重にも重なる重いカーテンを抜けていくと、そこにはー。
「花畑…?」
煌々と光輝く池にたどり着いた。
さながら、岩肌を見せる洞窟の中にひっそりとある秘湯だろうか。
その花畑はやや小刻みに揺れていて、よく見るとなんと全て花びらだったのだ。
緑色と白の花びらが花畑のようにぎっしりと敷き詰められていたのだ!
「綺麗…とても美しい光景ね…」
「はい、ボクもそう思います」
いつまでも見とれてしまうそんな魅力的な景色で、本来ここに来た目的を忘れてしまいそうになる。
「それでは、ゆっくり価値の器で体を温めてくださいね。あ、脱衣所などは特にないのですが、特別に形だけでも作っておきました」
指差されたのは、本当に簡易的に椅子と足場だけ作られた場所だった。
「ああああの、ボボボクは、着替えは見ませんから、安心してくださいね。奥にいますので、価値の器に入ったら、声をかけてもらえればなと」
ウリは顔を真っ赤にして、慌てて裏に引っ込んだ。
別に私の裸なんて、隠すほどのものはないのに。
そんなことを言ってもウリが困るだけなので、私はいそいそと服を脱いで、生まれたままの姿になった。
よく見るとネモフィラさまから受けた攻撃の傷跡が残っている。
(これは、消えない傷跡だー)
私は裸になって、ゆっくりとこの価値の器に向かった。
手で温度を確かめてみると、一肌よりもやや温かいくらいで、ちょうどよさそうだった。
それにしても、花びらのお風呂なんてイカしてる。
学校のプールほどの大きさかはありそうなこの価値の器は、まるでリゾート施設だ。
ゆっくり体を沈めてみると、ピリピリとしたお湯の感覚とフォイが体をほどよく締め付ける(水圧?)感覚が気持ち良かった。
「あー、極楽極楽!」
私は思いきって、中まで潜ってみることにした。
深さが気になったとしたがどんな感じになっているのか見てみたくなったのだ。
ザブンッ!と顔を沈めてみると、そこにはー?
「?」
何かいた。
なんだあれは。
見たことがある。
と思った瞬間、その人の姿は消えた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
水面から顔を急いで出して、荒れた息を整える。
あれは、そうだ、あのときだ。
「ネモフィラさまと、契約をしていた、ローブの人物…?」
なぜここに?そして私の前に?
私の心は一気にざわざわと台風のようにあれ始め、胸のモヤモヤが途端に騒ぎだした。
「嫌な予感がする…」
私はすぐにウリを呼んだ。
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