価値ある器(ワースプレート)とフォイ
「はーい、こちらですよ~」
ウリさまは、太陽のような笑みを浮かべながら私たちを湯処に案内した。
「ウリさま、先ほどはありがとうございました。遅くなったことのフォローとか、お土産のこととか…」
「あら、いいんですよ。ネリのことは、ボクが一番わかっていますから。それに、ネリは色々この湯治場の細かいお仕事を代わりにやってくれているのです。ストレスも溜まるんですよ…。
あと、ボクのことは、ウリって呼んでください。ボク、皆さんと、おともだちになりたいんですっ!」
オレンジ色の髪をした天使は、そのくりくりとした丸くて大きい目をキラキラ輝かせながら言った。
そして思わず手をぎゅっと握られてしまい、不本意だがかなりドキドキしてしまった。
胸がぎゅんと高鳴り鼓動が早くなり、顔が赤くなるのが分かる。
「いいんですか、そんな…」
握られた手を離せずにそのままでいた。
「もちろんですよ!ボク、友達がほしいんです。ここに来る方は、みんな治癒に急がしいですし、年が近い方も多くないのです。もしよければ…ですが」
控えめな性格。
これは、なんという奇跡の代物だろう。
「私もあなたと友達になりたい!ウリ、よろしくね」
「…はいっ!」
この飛びっきりの笑顔を見たら、誰だってこの子に恋をしてしまうだろう。
そんな宝石のように眩しく光る彼女だった。
「あ、ちなみにボクもネリも“運命の力”の子なんですよ。つまり、ここではない違う世界から来たものなんです。
なので、イズミさんは仲間なんですよ。あとでこのこともお話ししますね。まずは、治癒です!」
ウリはそう言って、頭の上に乗せているエチノダーンと共に湯処に案内してくれた。
あとから、ウリが握ってくれた両手をよく見ると彼女の手の指と指の間に水掻きがしっかりとあった。
さらに言えば、その手はウリの性格や容姿に合わず、氷のように冷たかった。
「はーい、ヒルナさんはこちらの湯処です。
湯処は、別名“価値ある器”と呼ばれています。
この扉を開けると、もうすぐです。軽くフォイを体にかけてから、温度に体をならしてから、そのあと全身をフォイに浸けてゆっくりしてくださいね」
「ウリ、フォイとはなんだ?」
「フォイは、皆さんの生活のところでいう、見た目や触感はお湯のようなものです。
しかし、お湯ではなく、このズィズィミの血液のようなものと思っていただければと。ズィズィミがあなたの悩みを感じ取って、あなた専用の“価値ある器”を作ってくれるのです。ズィズィミは、意思を持って、生きていますからね」
「…なるほど」
ヒルナは、今ので理解できたのだろうか。
私は、半分しか理解できなかった。
ウリは、ヒルナに大きな筒上のような貝殻(しかも色が七色に動いている!)と、タオルのような布(柔らかくてふかふかな昆布のようなもの)も、服(部屋着や浴衣のようなもの?)をセットで手渡した。
「フォイへの着水が終わりましたら、中央のアナパウラの穴へ来てみてください。穴と言う名前ですが、穴ではなく食事ができたり遊戯ができたりする憩いの場です。
昔は、海の岩壁をくり貫いて休憩所にしたことから、穴と言う名前が名残で残っています。
移動はオタマヒコがおすすめです。ズィズィミの地形が生きていることもあり、一分後には全く違う地図になり、必ず迷ってしまいます。
オタマヒコは特殊な訓練と魔法で管理しています。それに、五分に一回は通るようにしているので、安心して乗ってくださいね。
みなさんがどんなフォイに入ったのかは、守秘義務なのでボクからは言えませんが、よかったら皆さん同士でお話にしてみてください」
「ありがとう」
ヒルナは、そう言うと、そばにある大きなリンゴの実のような真っ赤に熟した何かに付いてある扉の奥に姿を消した。
リンゴのなかは、湯気らしき靄で何も見えなかった。
「次は、クロノさんですね。クロノさんは、オタマヒコに乗ってください。エチノダーンが案内しています。イズミさんは、ボクがご案内しますね」
そう言って私たち3人は、それぞれのフォイを浴びるために別行動をした。
「イズミさん、精神分離の魔法は大変でしたね。とっておきのフォイがあるので、楽しみにしてください!」
ウリのとびきり笑顔があるだけで、私の心は癒されている。
思い返すと、前の世界では仕事ばかりで温泉旅行にも行けていなかったな。
今日は異世界湯煙旅ということで、良い汗かきにいこう!
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