花火
三題噺もどき―きゅうじゅうさん。
お題:花火・扇風機の風・蚊取り線香
「ぅあっづい……」
じっとりとした汗が身体中にまとわりつき、呼吸をすることさえ止めたくなってしまうほどの猛暑。
息をするたび、熱風が体を巡っているような気がする。
パタパタと、団扇で扇ぎながら縁側に私は座っていた。
「……」
少し遠くから賑やかな祭囃子が聞こえている。
それに混じって、小さな風鈴の音。
(そう言えば、祭りの日、今日だった……)
別段、友達と約束をしたりしてまで行きたいと思ったことがないので、こういうのはすぐ忘れてしまう。
それに、この暑さの中わざわざ暑くなるような所へは行きたくない。
あと、祭りごととか何かの記念行事とか、そういうのが少々苦手なのだ。
「……」
夏祭りでは最後に花火を上げるのだが、それもここから見える。
あんな所に行かなくとも綺麗な、夜に咲く花が見れる。
むしろ、穴場的な感じに思っている。
人がいない、静かな場所で、きれいな花火を独り占め―なんて。
(しっかし……)
暑い。
暑すぎる。
部屋の中では、扇風機の風が生ぬるい空気を送り出している。
バタバタと、うるさいだけで何の役にも立たない。
ぐったりと縁側に倒れ込み、パタン、パタンと、うちわを扇ぐ。
頭の上では、蚊取り線香が、か細い煙をたてていた。
(あぁ〜なんか無いかなぁ、)
暇なら夏祭りでも行けばいいのだか。
動くことすら、面倒なのだ。
「……」
そんなこんなで、グダグダとしていると。
―パンっ!!!!!!
「ぁ、」
花火の打ち上げが、始まったようだ。
夜空に一瞬の命を懸命に光らせようと咲くその花は何度見ても綺麗だとおもう。
つい、手を止め、見入ってしまう。
あれは、熱い夏の、熱い花。
夏の象徴のようなもので。
(やっぱ綺麗だなぁ、)